真夏のサウンドオフ⑤
期末考査明けの日から夏の甲子園大会出場校を決める県予選が始まった。
この日、僕たち三年生は全国一斉模擬試験があり、野球部と吹奏楽部の生徒以外ほとんどの生徒は学校に来て模擬試験を受けていた。
だから森村直美の席は空席だった。
だけどもう一人、何故か秋月穂香も来ていなかったので俊介にその事を聞くと、大会出場者の世話をする為に球場に行っているという。
生徒会はいつからそんな活動をしているのだろうと思って聞き返すと、個人的な活動だと教えてくれる。
本当は俊介も行くと言ったのだが、一年生の時に授業をサボっていたのだから模試を確り受ける様に言われ、結局早朝にクーラーボックスに冷やしたタオルや飲料水などを入れて一緒に球場へ持って行ってから学校に来たそうだ。
何となく美人で可愛らしい妹キャラだった秋月穂香が俊介と付き合い始めて、実は結構お姉さんキャラだという事が分かって面白かったが、それにしても何故彼女は、そこまでするのだろう……。
もしかして森村直美と野村の事を影ながら応援しているのか?
――いや、違う。
だって彼女は山岡沙紀のバスケ部の試合でも、クーラーボックスと飲料水などを持ってきて世話をしていた。
しかし、なぜそのような事をするのかは不思議に思うだけで謎のまま。
(*別小説「秘密」の第15部『別れ』に経緯が分かるヒントが掲載されています*)
午前中に模試が終わったあと、本田が近くの球場で行われている野球部の試合速報を伝えにきた。
速報では七回表の我が校の攻撃が終わったところ、二対一でリードしているらしい。
これから直ぐに球場に向かえば最終回に間に合うかも知れないという事で、皆で見に行くことにした。
校門を出て学校から少し離れた場所で、僕たちはそれまで押していた自転車に二人乗りして球場を目指した。
進藤の自転車には山岡沙紀が乗り、本田の自転車には鈴木麻衣子、そして俊介の自転車に僕が乗る。
女子二人は、この二人乗りが楽しいらしく、はしゃいでいて僕たちのペアだけが黙々とその二台を追いかけていた。
球場が近くなるってくると、吹奏楽部の曲と歓声が聞こえてきた。
聞きなれたあの曲が流れていたが、球場に到着した時には相手側の攻撃に替ったのだろう違う曲が流れ、僕達は自転車を置いて直ぐに球場の階段を目指して駆け上がった。
階段の前の景色が急に開け、すり鉢状の底辺に野村が居た。
奴は丁度両手を上にあげてホームに対して背を向けて何かの合図をしていて、自然に僕の目は奴の向いている先にあるスコアボードを見た。




