痴漢?三木博文③
昼休みの終わり頃、秋月穂香と森村直美が教室に帰ってくるのが目に入った。
そのとき、午前中にあった身体測定の時に、本田が穂香さんの胸について語っていたのを思い出してしまい、秋月穂香の胸に目がいってしまう。
あまり意識して見たことはなかったが、こうしてみると確かにノッポの森村直美に比べて、秋月穂香の体形には女性らしいメリハリがあり、特に胸は二年生の時に比べ大きくなっていた。
五時限目のHRの時に各種プリント類が渡され、前の席から順に後ろの席に渡す度に何故か秋月穂香の胸の膨らみが気になってしまい、右回りで後ろを向くたびに気になってチラ見してしまう。
そして事件は起きた。
HRが終わり部活に向かおうとしていたとき、森村直美が僕を呼び止める。
何か嫌な予感がしたので、俊介に先に行ってもらう様に言ってその場に留まると
「チョッと屋上に来てくれる!」
と、命令調の言葉を投げつける。
彼女は僕の返事の有無など気にもかけずに、背を向けてさっさと大股で歩きだした。
嫌な言い方だったので無視したいところだったが、そうして部活に行く勇気も無く否応なしに付いて行く。
渋々付いて歩き出すと屋上に上がる階段の上から「早く上がってこい!」と罵倒され、重い足を上げて階段を登る。
僕が来ることが分かっているのだから開けっ放しにしておけばいいのに、几帳面に閉められていた屋上の扉を開けると、背を向けていた森村直美が振り返って言った。
「いったい、どういうつもり?」
その口調は教室や廊下で聞いた声よりも感情が込められていて、顔は更に怒った表情になっていた。




