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揺れるポニーテール⑫

 部活が終わって、帰り際に下駄箱の所で森村直美の話し声が聞こえてきた。


 誰と話しているのだろうと見ると、そこには野村がいて二人は笑いながら何か楽しそうに話をしていた。


 背の高い野村は森村直美と向かい合っても何の遜色も無く、すらっとした体に広い肩幅に笑うと白い歯が余計白く見えて、野球部のくせに丸坊主にもしていない髪型と併せてワザとらしい爽やかさを出して他人から見ると一見いかにも似合いのカップルに見える。


 だけど僕には、野村の日に焼けた筋肉質の腕は汗でテカテカに光り、まるで獲物を前にした爬虫類の様に感じられて汚らしく思える。


 僕はその不快感から、二人を無視するようにバス停に急いだ。


 バス停に着くと到着時刻を過ぎてもナカナカバスが来なくて、停留所には次第に長い列が出来ていた。


 列の長さで一体どのくらいの人が待っているのだろうと確認していると、さっき野村と話をしていた森村直美が列の後ろの方にいるのが見えた。


 あの位置では、今度来るバスには定員オーバーで到底乗る事は出来まい。


 でも僕は前の方なので、何とか乗れそうな位置にいる。


 待っていた事を装って”おーい!”と呼びかけようか、と考えるが周りの目が気になりナカナカ言い出す勇気がない。


 そうしていると、そこにまた野村の奴が自転車で来て何か話を始めた。


 そして、それから直ぐ彼女を自転車の荷台に乗せると走り出した。


”二人乗りは校則違反じゃないか!それに道路交通法でも認められていないはずだ。それを堂々と学校の前の停留所で……”


 僕がそう思っている前を二人の乗った自転車が通り過ぎる。


 森村直美が僕に気が付き、笑顔で何か言いながら手を振っていたが、僕は気が付かないふりをして無視した。


”なんだよ、アイツ……”


 それから三十分後、所定の時刻を五十分も過ぎて漸くバスが来た。


 乗り込むのを躊躇するくらい混んでいたけれど、列の前の方に並んでいた僕は何とか乗る事が出来たが数人後ろの列からはやはり定員オーバーで乗る事は出来なかった。


 運転手がマイクで交通事故の渋滞に巻き込まれたため遅れたことと、車内が込み合っていることを詫びていた。


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