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揺れるポニーテール⑪

「暑つぅ~!クーラー入れようぜ!」


 本田が部室に入ってくるなり大声で言った。


 棋道部のある記念会館は、もともと卒業生たちが資金を出し合い、卒業生も使える施設として建築されていたので当然普段我々が使う文部科学省のプアーな予算で造られた安物のコンクリートの箱と違い冷暖房が完備されている。


 本田の言葉に心が揺れ動くが、その言葉を打ち消すように「駄目!駄目!先生から節電のため使用を禁止されているから使えないぞぉ~」と、部長の進藤が言ってくる。


 そもそも記念会館の入り口と部室の扉にも”生徒による冷暖房の使用を禁ずる”と御丁寧に張り紙がしてあるから諦めていたのに、本田の奴がそれを蒸し返すものだから今迄我慢していた事が我慢できなくなってしまう。

 

 もう七月に入り、季節は一気に夏へ加速。


 開放された窓際の壁に背中を持たれかけて暫く休憩をしたとき、急に吹奏楽部の演奏が耳に入ってきた。


 曲目はAKBの曲を応援曲風にアレンジしたもの。


 森村直美から聞いたところによると野球部からのリクエストだという事だったが、万年一回戦敗退の超弱小チームのくせに彼らは野球の応援に吹奏楽部が演奏するのを当り前のように思っていやがる。


 と言っても、どこの高校も野球の大会はまるでお祭り騒ぎで吹奏楽部だけじゃなく応援団やバトン部なども借り出されるし甲子園に駒を進めれば学校から貸し切りの直通バスまで出るらしい。


 まあしかし我が高には応援団も、バトン部もないから、被害を受けるのは吹奏楽部だけで済む。


 しかし、逆に言えば吹奏楽部が野球部の応援を一手に引き受けるかたちになり、大役だとも思う。


 曲は野球部全体でリクエストしてきたという事だったが、その野球部の主将を務めている野村は昔からAKBのファンだったので、まるっきり奴のリクエストじゃないかと僕は思った。


 それに、その曲を吹奏楽部にリクエストしに来たのも野村自身で、それは主将だから当然と言えば当然なんだけど、吹奏楽部の部長に直接伝えたのではなく森村直美経由で伝えて貰ったと言う所が納得いかなかった。


 確かに同じ中学出身だと話しやすいというのは分からないでもないけど、本当なら部長同士がするべき話のはずで、窓の外から聞こえてくる曲を聴きながら、この前奴が言った自分勝手な台詞も思い出し不快感を覚えていた。


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