揺れるポニーテール⑤
森村直美は頬杖をついたまま今度は視線を僕から外して言った。
「あ~。行きたかったんだけど、行けなくて良かった。私、あんな事件があったら屹度相手の子と口喧嘩になって皆に迷惑を掛けていたわ。そういう所が駄目なんだ私って」
ナルホド丁度僕が考えていた事に対して、その本人から答えが聞けるとは思ってもいなかった。
確かに言われてみると、そうなる事は簡単に想像できて可笑しい。
彼女は、そんな僕の表情を読み取ったのか「勝手に想像して笑うな!」と言ってきたので、自分が想像させたんじゃないかと言い返した。
反撃されるのかと身構えていると、彼女は遠くを見たまま
「まっ、そうだけどね……」
と、あっさり返事を返して自分の席に帰って行った。
”一体何しに来たんだ?”
反論されると思っていた僕には、この森村直美のとった態度は意外でもあったし、何故か物足りなさも感じた。
彼女が席に戻って直ぐ五時限目のチャイムが鳴った。
***
山岡沙希たちのバスケ部は、二週間後の土曜日に行われた準決勝にも勝って日曜日の決勝に進んだ。
その日曜日には、あのM学園の7番柴田瑠香と10番円藤美咲も応援に駆けつけてくれたが、さすがに決勝の相手は全国大会で毎年優勝候補に挙げられるほどの強豪チームだけあって敗れた。
それでも第二クォーターまでリードしてみせて、相手チームや関係者を驚かせた。
試合終了後に、あの柴田瑠香が山岡沙希を捕まえて、一緒に大学で頑張ろうと話をしていて、何時の間にか二人が仲良しになっていた事に僕たちは驚かされた。
結局、吹奏楽部が忙しいためか森村直美がバスケ部の試合を応援しに来る事は一度もなかった。




