揺れるポニーテール③
昼食を終えた教室で、三木博文は昨日見に行ったバスケの事を思い出していた。
もしも相手チームの7番の選手に平手打ちをしたのが秋月穂香ではなかったら、どうなったのだろうと。
もしも、鈴木麻衣子だったら?
いや、彼女は決して打たないだろう。
もしも、榎田さんだったら?
これも、鈴木麻衣子と同じで決して打たない。
では、当事者の山岡沙希だったら?
これは恐らく、喧嘩になっただろう。
もしも、僕だったら?
恐らく僕が打った途端にキャーという悲鳴が周囲から発せられて、全ての非難を込めた視線が僕に集まるだろう。
そして翌朝の新聞の見出しには
”S高生「M君」(18)、競技会場で暴力行為!?”
と、こんな見出しが新聞の一面にデカデカと掲載されるに違いない。
まあ、僕が打つ事は無いけれど、それでも何故か進藤や本田、俊介が仮に7番の選手を打ったと考えたとき、どう考えてもその事件は新聞記事迄には発展しない気がした。
人には、それぞれに役割がある。
だから自分ひとりで解決できない問題に直面した時に、その役割を分担できる仲間が多ければ多いほど、より多くの困難を乗り越えられる。
と、そこまで考えた時に当日居なかった人物の顔が思い浮かんだ。
”森村直美”
もし、森村直美が打ったら……。
僕が、そう考えていた時、前の席の椅子がガタリと音を立て、誰かの顔が僕に覆い被さるように近付いてきた。
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