揺れるポニーテール①
昼休み、校庭の中庭で森村直美たち四人はお喋りを楽しんでいた。
話題は昨日のバスケ部の試合会場で起こったこと。
鈴木麻衣子が話を直美に振る。
「直美が来ないから、可哀想だったよ」
「んっ、何が可哀想だったの?」
聞き返す直美に山岡沙希が呆れたように言う。
「んー、何じゃなくて、誰?だよ」
「直美ったら、もう少し素直になりなさい」
秋月穂香も苦笑いしながら言った。
「私が居なくて可哀想と言えば、三木しかいないか!」
と頭を掻きながらそう言うと、三人が一斉に黄色い歓声を上げたので、直美は場を鎮めるように落ち着いた口調で話を付け足した。
「でも、勘違いしないでね。私はあくまでも、あの不器用極まりない男の保護者として言っているんだから」
「まあ、確かにアイツは不器用だし、気が利かないし、運動も出来なくて、その上背も低くてド近眼。良い所なんて探すのが大変」
「チョッと沙希、それ言いすぎ。頭は良いのよ、頭は」
呆れ顔で呟いた沙希の言葉に、麻衣子がすかさずフォローを入れたつもりだったが、フォローになっていなかったので、更に秋月穂香がフォローを付け足す。
「友達想いで優しい人だけど”それをどう相手に伝えたら良いのか”っていう所が三木君は苦手なんじゃないのかな」
穂香の言葉に、直美は手に顎を乗せて遠くを見つめて
「そうなんだよな~」
と溜息をついた。




