表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/122

罠㉔

”やばい!』”


 僕は、まるで自分が殴られるかのように首を縮めた。だけど、打った秋月穂香本人は微動だにしない。


 しかし僕の心配をよそに、M学園の7番はその秋月穂香の横をスーっと擦り抜けると、一瞬山岡沙希を見てから円藤美咲の肩に手を掛けて言った。


「バスに遅れるぞ、お前たちはこれから未だ練習が残っているんだ」


 そして、肩に伸ばした手で円藤美咲の肩に下げられていたバックを二つ掴むと、自分の肩に掛けた。


 円藤美咲は「ハイ」と答えると山岡沙希に一礼して立ち上がる。


 M学園の7番は、赤い頬を摩りながら山岡沙希の方を向き言った。


「私は柴田、柴田瑠香。前からアンタのこと知っていて対戦するのを楽しみにしていたけれど、いざ対戦を前にしてみて、勝てない不安に押し潰され卑怯な真似して悪かった。……で・でも、今度戦うときは正々堂々と渡り合える選手になって見せる」


 そう言ったあとはクルリと背を向けて円藤美咲に「今年こそはインターハイに連れて行ってやるつもりだったけど出来なくて、来年は実力で行け。今日は負けたけど、いい経験になったな」と言い、先に歩き出した。


 円藤美咲は明るく「ハイ!」と返事をした後、振り返って頭を深々と下げて


「今日は、本当に有難うございました!」


 と僕たち全員に挨拶して、前を歩く柴田瑠香を追いかけて行った。


 遠ざかって行く、ふたりの会話が届く。


「お前、足腰をもっと鍛えなくっちゃ駄目だな!」


「ハイ!さっき山岡先輩にも言われました」


「そうか、好いアドバイス貰ったんだから頑張らなくっちゃ、だな!」


「ハイ!頑張ります!」


 声はだんだん小さくなり直ぐに周りの喧騒に掻き消され、そして二人はバスの中へ消えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ