表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/122

罠㉑

 両チームの選手たちが挨拶をして退場する。


 観客席で応援をしていた学生のうち何人かは、直接部員たちを激励するために慌てて階段を降りていた。もちろん僕たちも。


 広い通路の端に集合して片付けをしているバスケ部のところに行くと、そこには既に幾人もの生徒たちが押し寄せていて人の輪が出来ていた。


 輪の中心付近には進藤がいて、山岡沙希に足の様子を聞いているところだった。


 大丈夫と笑って答える彼女の言葉に、みんなホッとする。


 そうして部員たちや部員とその友達、あるいは僕たちのように応援に駆けつけてきた者同士が賑やかに雑談をしているとき、急にその声が止った。


 怪訝な顔で、みんなが僕を見る。


 一瞬慌てたが、みんなが見ている方向は僕のほうだけど、見ている角度が地学事に気付く。


 ”僕じゃない。僕の後ろに誰かいる”


 背中に人の気配を感じて後ろを振り向くと、ジャージ姿で凄く背の高い女子がスポーツバックを四つも抱えて立っていた。


 ”こいつ誰?”そう思って振り向いた僕なんかには目もくれずに、凄く背の高い女子は僕の横を通り過ぎると、山岡沙希の目の前まで来た。


 その時やっとこいつが、あのM学園の10番だって事に気が着いた。


 ”やばい!お礼参りだ!”


 僕は、彼女が試合中に果たせなかった事を遂行しに来たのだととっさに思った。


 しかし、彼女の口から放たれた言葉は違っていた。


「山岡さん……試合中は大変申し訳ありませんでした」


 彼女は今にも泣きそうな声だったが、しかし大きくハッキリとした声で謝る。


 山岡沙希は、それを座ったまま見上げて黙っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ