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罠⑳

 これが決まれば二点を勝ち越すことになり、残るプレーは相手側の一回のみ。


 しかも、この回のプレーに時間稼ぎした相手チームにとっては、それがアダとなりプレーに掛ける時間も少ない。


 高く放物線を描いたボールが、ゴールに吸い込まれて行く。


 僕にはそう見えたし、みんなもそう願っているのだろう。


 全ての人たちの目は、そのボールにクギ付けとなり、入れと願う者達と外れろと願う者達の祈りで会場は一瞬静まり返った。


 ボールが落ちてくる。


 空気の密度が高いのか、普段の重力による自由落下よりも随分と遅い。


 ボールは遅い自由落下のせいか、ゴールネットの金属の枠の部分に当たり、じらすように今度はそこで枠に沿って横に弧を描き外側に落ちる。


 我が校の応援席から”あーー”と言うため息とも悲鳴ともつかない声が上がり、相手チームの応援席からは歓声が上がった。


 しかし、これでプレーが終わったわけではない。


 ゴールを外に外れたボールに、いち早く飛びついたのは山岡沙希だった。


 彼女は短いドリブルをした後、直ぐにシュートの体制に入った。


「オー!」


 我が校の応援席から、今度は歓声が沸き上がる。


 隣にいる本田でさえ、こぶしを突き上げている。


 相手側の応援席からは悲鳴が上がり、まるで逆転サヨナラゲームのような雰囲気だ。


 今まさにシュートを放とうとする山岡沙希目掛けて、あの7番の選手が邪魔をしてくる。


 ついさっき我が校のゴール前で山岡沙希の手品のような動作にボールを奪われて、このピンチを招いた責任からか、執拗に絡みつく。


 そして事も有ろうか、シュート体制に入った山岡沙希を押して転倒させてしまった。


”このやろう!結局、山岡沙希を潰すのが目的かよ!”


 そう心の中で怒っているうちに、ホイッスルが鳴る。

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