罠⑤
運動部特有の熱気に包まれた会場には既にS高女子バスケットボール部のメンバーが集まり、その中に山岡沙紀もいた。
背の低い僕から見た彼女は物凄く背が高い印象だったが、こうして同じ部活のメンバーの中に囲まれた彼女を見ると少し背の高い程度にしか見えない。
様々な情報に詳しい本田が隣にいたので聞いてみると、山岡沙紀の身長は一六八センチで森村直美の方が高いと言っていた。
会場内には僕たち棋道部の他に秋月穂香と鈴木麻衣子の二人が来ていて、山岡沙希よりも背の高い森村直美は見渡した限りいない。
僕が周りを見渡している事に気が付いた鈴木麻衣子から、直美は吹奏楽部の練習があって今日は来ないと聞かされた。
周囲を見渡した時に意外にS高の生徒が大勢応援に来ている事に気が付くと本田が、ああ見えても山岡沙紀は女子を中心に結構な人気なのだと言う。
「えっ?でも二年のときは結構嫌われていたって聞いていていたんだけど」
その事に返事を返すと、二年の夏までは周りから生意気だって思われていた彼女が、三年生が抜けた夏以降からは練習や試合でムキになる事も無く、後輩の面倒も良く見るようになったらしい。
もともとバスケ部でも突出した上手さを持っていたから、性格面での成長が、この人気の秘密らしかった。
二年の夏以降と言えば丁度進藤と付き合い始めた頃だと思い、以前から思っていた「恋によって人は変わる」というのを思い出した。




