思わぬ応援団②
一瞬、何故かその名前が浮かんだ。
横のほうから「こっち、こっち!」と聞き覚えのある大きな声が聞こえたので、声の発せられたほうを振り返ると進藤たちが居た。
声を掛けられた女子たちは声に気がついて、こちらに向かってやって来る。
「結構多いね!」
背の高い女子は山岡沙希で、あとの二人は鈴木麻衣子と秋月穂香だった。
「大きな大会へ繋がる試合だから、みんな頑張ってね」
秋月穂香が特に誰ともなく集まっている棋道部員全員に話しかけると”待ってました!”と言わんばかりに喜ぶ。
「今日は、応援団として参りました!」
本田の喜ぶ姿を見て、何故か鈴木麻衣子がバツの悪そうに敬礼して、少しオチャラケて言う。
”あれ?一人足りない”
そう思って辺りを見回して見たが、やはり森村直美の姿はない。
「直美は今日来られないから」
山岡沙希が何故か僕に向かって、そっけない口調で言ってきたので聞き流していると鈴木麻衣子が
「吹奏楽部の練習があるんだって」
とその来られない理由を補足した。
別に森村直美が来ても来なくても、試合は淡々と流れるだけなので関係ない。
むしろ試合に挑む前にアイツに、とやかく言われることもないので寧ろ清々するくらいだ。




