部活紹介⑬
言っている意味が分からなかったので
「なにが?」
と聞くと
自分たちのコンクール曲の練習の合間に、応援曲の練習もしていると言う。
そう思うと、いつの間にか吹奏楽部の演奏する曲がクラシックから、甲子園大会で良く聞く応援の曲に変わっていた。
「うちの野球部は一回戦敗退の常連だけど、万が一甲子園に行ったら大変だぜ!自分たちの練習時間なんて、ありゃしない」
確かに今まで気にもしなかったが、どこの野球部も地区予選や大会の時は吹奏楽部が駆り出されているが、もしそうなった場合彼らの本命である全国吹奏楽コンクールの方は、どうなるのだろう?
「野球部は良いよな、弱くても吹奏楽部が応援に来てくれて。それに比べて我が棋道部は誰も応援に来てくれなくて寂しい限りだ」
本田が、ぼやくのを聞いていて棋道部の試合に部外者が応援に来ないことなんて今まで当たり前のことだと思っていたが、言われてみると不公平だと思った。
「吹奏楽部も棋道部の応援に来れば良いのに」
本田の言葉が可笑しかったので、いったい棋道部の応援に何の曲を演奏するのか聞いてみる。
「コンバットマーチ。合わねぇな……。やっぱ演歌?これじゃあ祭りの将棋大会だな」
笑って言い終ると本田はトイレに行くと言って部室を出て行った。
休憩を終えると、今迄一年生相手に囲碁の指導をしていた俊介が戻ってきたので今度は俊介と対局する事にした。
吹奏楽部の演奏が頭から離れないまま指していたら、あっけなく負かされてしまい僕もトイレに行って気分転換する事にした。
”結局、変わらないのは恋をしていない僕と本田だけか”
トイレに入り、用を足しながらボソッと、その言葉が口から零れた。




