部活紹介⑤
進藤が腕組みをして少し考えたあと、困ったように片手を高く上げる。
「榎田さん。この詰め将棋、詰みませんよ!なんかヒントください」
「じゃあ、一手だけですよ。最初の一手は飛車成らず。です」
「えっ!飛車成らないんですか?勿体無い」
と言ったあと、会場に向かって分かった人を探す。
一年生の男子が五人手を上げたので進藤が、その中からさっき答えていない生徒にマイクを持って回答を聞きに言く。
「えっと、飛車が成らないあとは、さっき部長さんが言ったとおり1、二歩まで進みます」
僕たち駒係りはさっきと同様の配置になるよう移動する。
「さっきの僕と同じだったら1、二歩で反則になりますよ!大丈夫ですか?」
進藤が心配そうに一年生に聞くと一年生は
「大丈夫です。さっきは1、二歩を打ったときに3、二飛車が龍に成っていたので詰みましたが、今回の3、二飛車は龍に成っていませんから玉将は2、一玉と逃げることが出来ます。だから打ち歩では詰まずに、次の3、一”と”までの七手詰めだと思います」
ハッキリとした言い方で、かなり将棋が出来そうだ。
マイクを持って一年生の所まで行っていた進藤が、その場から正面に
「榎田さん、合っていますか?」
「お見事です」
と榎田さんが答える。
進藤が棋譜図の位置に戻ってくる。
さて、いよいよ次はシナリオに記載されていない最後の詰め将棋だ。
いったいどんな棋譜だろうと、榎田さんが譜面台に駒を配置していくのを注意深く見た。




