部活紹介④
進藤が大袈裟に
「これはさっきより難しいですねぇ~。榎田さん。ちょっと私も考えてみていいですか?」
と話し始めた。
「先ず3、二飛車成り。次は1、一玉で、それでは必然的に3、三馬、同桂で……よし・分かった!」
進藤は、また大袈裟にドラマ『トリック』の矢部刑事のように握った手をポンと鳴らし
「ここで持ち駒の1、二歩を打って詰めです!」
僕は言われるまま、その位置に移動した。
すると榎田さんが
「部長~失格ですよぉ」
言われた進藤は、また大袈裟に
「なんで?」
と返す。
「将棋のルールでは、昔から相手から取った持ち駒の”歩”を打って詰ませるのは禁じ手です」
「えっ!何で?金とか他の駒ではいいのに?」
「そうですね、将棋の駒にはチェスと同じように駒ごとに身分と役割がありますが、チェスや囲碁のような昔からあるボードゲームと違うところは相手から取った駒を生かせるところなんですが、持ち駒と言うのはさっきまで味方だった駒でしょ。その味方の駒の中で一番身分の低い”歩”が寝返って、元々使えていた主人の首を取るというのはゲームとはいえ余りにも失礼ではないか、ということで禁じ手となっています」
進藤は頭を抱える動作をして
「あ~…そういうことか!さすが日本人の美学が入っている。と言うことですね。じゃあ”歩”役の三木君、戻ってください」
僕は、本田のシナリオ通り頭を書きながら戻ると会場から予想通りクスクスと笑い声が聞えた。




