部活紹介②
前半の部活紹介が終わり、休憩を挟んだ後最初に行われたのは森村直美の所属する吹奏楽部だった。
壇上に現れたのは指揮棒を持った部長一人で、その指揮棒に合わせて二階席に陣取る楽隊が各楽器の照会と演奏を行う。
一年生たちは全員後ろ向きになって見ていたが、僕のいる位置からは角度がきつすぎて如何にノッポの森村直美といえども姿は見えない。
その代わり、彼女が吹く澄み切った切れのあるオーボエの音色だけはハッキリと聞くことが出来た。
吹奏楽部は各部活動紹介の冒頭で短い入場曲も演奏しているので、今日までの準備は大変だったろう。
吹奏楽部の部活紹介終了時間を棋道部員の集合時間に決めていたので、人間将棋の準備をするために体育館の外に出た。
将棋の駒役の僕たちは、厚紙やダンボールで作った鎧兜に身を包み、背中に自分の駒を書いた旗をさしナカナカそれらしい風体になった。
解説担当の榎田さんは、真剣にボードとメモ用紙をチェックしている。
司会進行役の進藤は、体育館の中で行われている山岡沙希の、女子バスケットボール部の部活紹介を覗いている。
武者の格好をした本田たちは写真を撮ったり斬りあいをしたりして騒いでいたが、僕と俊介の二人は石段の上に腰掛けてボーっとしていた。
それから暫くして、漸く僕たち棋道部の番がやって来た。
吹奏楽部が、大河ドラマで聞いたことのある時代劇のテーマ曲を演奏して、それらしい雰囲気と共に入場し緊張感が走る。
隣で俊介が
「少し重くない?」
と小声で呟いたが、本当、ダンボール武者にはチョッと不釣合いなくらい本格的演奏だった。




