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オーボエの調べ⑥
「何だよ!いったい」
目的地についたと思い森村直美の手を振りほどき思いっきり不機嫌そうに言うと
「ゴメン!ちょっと聞いて欲しいんだ。お願い!」
いつも強気な彼女にしては珍しく手を合わせてきたので、少しだけ気分が良くなり
「いいよ、少しくらいなら」
と偉そうに応える。
何の話かと思っていたら、彼女は土手の階段にしゃがみ込み楽器の入ったケースを広げ、その中から笛を取り出した。
「クラリネット?」
「ううんオーボエって言うのよこの楽器。ちょっとこれ広げて」
渡されたものは三脚の付いた譜面台。
僕がそれを広げている間、彼女はオーボエの根元に何かストローのようなものを着けていた。
部活紹介のときに演奏する題目の練習かと聞いてみると、譜面台にノートをセットしながら、個人的に練習している曲だと返事を返して来た。
普通はここで何の曲か質問するべきなのだろうが、音楽のことは全く分からないので聞いたところで何の意味もないと思い黙ってた。
彼女は何度か笛をピーピー鳴らした後に、その練習をしている曲を奏でだした。




