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オーボエの調べ⑤

 バスが来て乗り込むと丁度二人がけの席だけが一つまるまる空いていた。


「ラッキー座ろうよ!」


 と言うと僕の返事も聞かずに今朝同様に手を引いて連れて行かれ、座席の前まで来ると


「あんたはココ、外の景色を見なくちゃ」


 と僕を窓際の席に押し込んで座った。


 いつもバスの中では立っているときは片手に暗記帳をもって、そして座れたときには教科書か参考書を開き移動時間を勉強に当てているのだが、今日は森村直美に言われるままに外の景色をボーっと眺めて過ごした。


 森村直美は隣で楽譜を広げて彼女にしては珍しく、ここでも一言も話しかけてこなくて、いつも勝手に話しかけられて迷惑に感じていたことが今は逆に居心地が悪く感じられた。



 二十分ほどバスに揺られ、古びた商店街の傍の停留所で森村直美と一緒にバスを降りる。


 僕の家は停留所に近い古い造り酒屋で、森村直美の家はそこから七軒離れた美容院。


 バスから降りて家のほうへ歩き出そうとしたところで森村直美が僕の手を引っ張って


「ちょっと付き合ってくれる?」


 と言った。


 手を引っ張られるのも付き合わされるのも、それぞれ今日三回目のことだった。


 そのうちの一回目はろくなものではなかったので今度はなんだろうとドキッとした。


 断れるものなら断りたかったが、何故かいつも断れない。


 さっさと家に帰って今の嫌な気分を晴らすため、少しの間ふて寝をしたい気分だったが結局手を引かれるまま家とは反対の河原に連れて行かれてしまった。

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