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オーボエの調べ②

 先ず司会には部長の進藤が決まり、解説は棋道部最強の女子部員、榎田さんが勤めることが決まった。


 残りの部員はパートごとに駒の役割を担う。


 不意に本田から名指しで、持ち駒の、歩をやってくれないかと依頼された。


 詰め将棋では歩の活躍する機会は余りなく、僕が小さいからと言って安直に歩を指名するとは余りにも友達としての配慮に欠けるのではないかと少し不満に思い辞退したい気がしたが、そのとき何故か提案者の本田はおろか進藤と俊介の顔に只ならぬ緊張感が走るのを感じた。


 進藤と俊介は本田のメモに目を通してその役割を知っているのだ。


 そして僕は未だその局面図すら知らない。


”友達を信じよう!”


 そう思い僕が提案を受けると、三人はおろか副部長の榎田さんまでが安堵の表情を浮かべるのが分かった。


 全員の役わり分担が終わった後で、全部で三つある詰め将棋のうち二つの局面図が発表された。


 そして二番目の局面図を見たとき自分の役割である歩をどこに打つか見て、驚き、そして落胆した。


 僕の役割は『打ち歩』と言って、持ち駒の、歩を相手側の、玉の前に打って王手をかける反則技で、詰め将棋はおろか本番の将棋でも昔から禁じられている手だ。


 何故禁じられているかと言えば、持ち駒と言うのは相手から取った駒で、守備側にとっては元々味方だった駒だが、その中でも最も身分の低い歩が寝返った途端に元の主を追い詰めるのは余りに礼儀に反すると言うことで禁止になっている。


”これじゃあ、あんまりだ”


 難しい問題の合間に皆を笑わせようと言う魂胆なのかと複雑な気持ちになった。


 もっとも、背が低くてお世辞にも見た目が良いとは言えない僕の容姿からしては適任といえば、これほどのキャストは我が棋道部の中では見つからないだろうと、悔しいけど認めざるを得ないのは事実だと自分に言い聞かせた。

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