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痴漢?三木博文⑥

「アンタ勉強ばかりしていて、そういうところに免疫力がないんだから、人の話に気を取られちゃ駄目よ!」


「ゴメン」


 と、謝ることしかできなかった。


「エッチな目で見ていたのは二・三回だから。穂香もその他の誰も気が付いていないと思うから、勿論この事は秘密にしてあげるから以後気を付けなさいね」


 まるで実の姉が弟に話す様な口調が優しく沁みた。


「まったくしょうがないね、男の子って!アンタも男の子の端くれなんだから自覚を持ちなさい」


 言葉の最後の一説が、いつもの森村直美らさが戻っていたので


「男の子の端くれって酷いな」


 と言い返してしまうと


「だって、そうでしょ!」


 と念を押された。


「今回は初犯だし充分反省している様だから、これで勘弁してあげるけど次は容赦しないからね」


 森村直美は、そう言うなり背を向けて屋上から去って行った。

今迄気が付かなかった四月の爽やかな風が、全身から噴き出した冷汗をさらっていくのを感じた。そして目の前に見える丘の木々には青々とした若葉が育ちかかっていた。



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