8話
シャワーを浴び終わって部屋に戻ろうとした時だった。
台所の方からなんか焦げ臭い匂いがする。慌てて台所に行ってみると…。鍋が火に掛けっぱなしで煙が上がっている。
うそ!?なにこれ!
コンロの火を消して鍋を掴み、流しに鍋を荒っぽく投げ込んで水道の水を勢いよく出した。
ジューーー!!
まるで機関車みたいに蒸気が鍋から吹き出す。
しばらくして蒸気が消えると鍋の中が焦げて真っ暗になっているのが見える。何かを煮てたのかな?炭になってしまっていて何を作ろうとしていたのか分からないけど。
…危なかった。
あと少し気が付くのが遅かったら…。
そう考えるとゾッとする。
台所には誰もいない。私はシャワーに入っていたから、あと考えられるのは…。
お婆ちゃんの部屋に行ってみるとお婆ちゃんはテレビをつけっぱなしで眠っていた。枕元にあるリモコンでテレビを消してからお婆ちゃんの部屋を出た私は念のためガスの元栓を閉めてから階段を登り、自分の部屋に戻る。
机の上に置いてあったスマホを取り出してスマホを充電させてからベットの上に放り投げてテレビをつける。
先生がくれたコンビニの袋を開くと中にはサンドイッチとおにぎり、プリンとミルクティーが入っていた。
先生ったら。こんなに沢山買ってくれなくてもいいのに。逆に申し訳ないよ…。でも有り難く頂こう。
お腹が空いていたため、すぐに全部食べてしまった…。
時計を見るともうすぐ23時になろうとしている。ヤバい…こんな時間に食べたら太っちゃうかも…。
まぁ一日くらいいっか(笑)
あ…そう言えば。
私は鞄の中からノートを取り出してパラパラとめくる。
あった!あのお兄さんのメアド。
何かお礼をしなきゃなんだけど何が良いんだろう?
菓子折り?果物詰め合わせ?お酒?
うーん。
何がいいかな?
そう言えば妹さんもいたっけ?
あのお姉さんカッコよかったなぁ。あんな怖いおじさんを簡単に片手だけで腕を捻り上げて大人しくさせちゃうなんて。
でもちょっと怖かった…。
明日は休みだし色々見てみよ。
そろそろ寝よう。
私はベットに横になり、目を閉じる。
すぐに睡魔が襲ってきて段々と意識が遠ざかって行く。
…しかし眠れたのも束の間だった。
ドン!ガシャン!
下から物凄い音がした。
「え…?なに…?」
おそるおそる階段を降りてみると台所の電気が点いている。
台所にはお婆ちゃんがいた。
「お婆ちゃん…?」
声をかけた私の方を振り向くなりお婆ちゃんは今までに見た事のないとても怖い顔で私の方に詰め寄ってきた…。
「あんた!なんて事をしてくれたのっ!」
「え…?」
「明日、結衣が来るから私があの子のために作ったのよ!酷い…酷すぎる!どうしてこんなこと!?」
さっきの焦げた鍋を指さして物凄い剣幕で私に怒鳴るお婆ちゃん。
「うちの結衣があなたに何か悪い事をしたの!?」
「私が結衣だよ!お婆ちゃん!」
自分でもびっくりするくらいの大きい声が出た…。
バチン!
でも…私の頬をお婆ちゃんは平手で殴った。
「ふざけた事言うんじゃないよ!結衣ちゃんは…結衣はねぇ!こんな事をするような子じゃないんだよ!」
「お婆ちゃん違うの!お鍋を火にかけっぱなしだったから…」
「うるさい!出ていけ!」
お婆ちゃんに突き飛ばされて私は床に転がった。
…今年80歳とは思えないほどの強い力だった。
「出ていけ!早く出ていっておくれ!」
お婆ちゃんは私を玄関に追いやるように私に迫ってくる。
「早く!出ていけ!」
私は何とかサンダルをはいて玄関を出た…。
「二度と来るんじゃないよ!」
バン!と玄関の扉を閉めて鍵を掛けられてしまった…。
「お婆ちゃん…」
私は玄関に立ち尽くしていた…