4話
咄嗟に彼女の前に立ち、俺が蹴りを受ける。
ドスッ!と言う鈍い衝撃の直後に痺れるような感じの痛みが左側のあばらの辺りを襲いその場に倒れてしまった。立ち上がろうにも痛みで立ち上がれない。
「いってぇ…」
「やめてください!」
「へっ!女の前でカッコつけるからこうなんだよ!」
「あの…大丈夫ですか。私のせいで、すみません。ごめんなさい。」
泣きながら謝るレジの子。
その時、彼女の名札が見えた。
そうだった秋山さんだったなこの子の名前って。
「…大丈夫だよ。お姉ちゃんケガは?」
「私は、大丈夫ですけど…あ、ちょっ…」
なんとか立ち上がり、秋山さんを庇うように彼女の前に立ち、オッサンともう一度対峙する。
「オジサンさ…今なら許してやるからこの子に謝った方がいいよ」
「は?何言ってんのお前。もう一発食らいたいの?」
「もう一度言うけど彼女に謝るなら最後のチャンスだよ、じゃないとオジサン後悔すると思う」
「なに偉そうに上から言ってくれてんだよこのクソガキがぁ!」
今度は殴る動作をして俺に向かってくるオッサン。でも俺は殴られなかった。
「おい…うちの兄に手ぇ出してんじゃねーよクズが!」
「なんだコイツ!おい!離せ!クソっ!いてぇ!いてぇって!離せよ!」
間一髪の所で心優がオッサンの腕を掴んで、捻り上げていた。さすが空手の有段者…恐るべし。
「よくもうちの兄に蹴りを入れてくれたなぁ。あぁ?おい…」
「離せ!おい!本当にいてぇって!折れる折れる!」
「って言うかお前、この子にも手ぇ上げようとしてただろ?」
端から見るとまるで拷問の様だ…心優は怒るとマジで怖い…。
「すみませんでした!謝りますから許してください!」
「もう遅いんだよ!オラァ!」
「ああああっ!折れる!折れる!折れ…る!」
「「折れる」じゃねぇんだよ。…「折る」んだよ。」
「もうしないから許して…」
ググクッとオッサンの手にかなりの力を入れる心優。
「あああああああっ!」
力を入れると同時に響き渡るオッサンの悲鳴。そろそろ止めないと心優は本気でオッサンの骨を折るつもりだ。
「おい、心優…」
「やめてあげてください…」
俺が言う前に秋山さんが心優に言った。
「え?どうして?コイツ、あなたに対して暴力を振るおうとした最低なクズ野郎だよ?」
「私がいけないので…。だから放してあげてください。お願いします…」
「うーん。それは出来ないなぁ。」
「え…どうしてですか…」
「だって警察呼ばないと。この人、傷害の現行犯だし。」
「なっ!?」
警察と言う言葉に動揺したのか、逃げようと暴れるオッサン。
「暴れないでよ。…本当に折るぞ」
さらに力を入れる心優。
なんかオッサンの腕がミシミシ言ってる…。
「ああああああああああっ!逃げない!逃げないから離して…」
オッサンの悲鳴を聞いたのか、人が集まり始めてきた。