3話
やっぱりあっちぃー
「よー、チャリで行こうぜ。暑くてたまらん…」
「えー。お兄ちゃんと2ケツすんのやだー」
「なんで2ケツする前提なんだよ」
「じゃあ良いよ私が自転車で行くから。」
「え?俺は…?」
「徒歩でよろしく」
「お前ブチ転がすぞ」
「じゃーよろぴくーww」
あーあ。
行っちまいやがった。
まぁいいか。俺にはまだアレがある。
俺は玄関から家に入り、リビングに向かう。
リビングではさっきの心優と同様にじいちゃんが高校野球を観ていた。
「じいちゃん。ちょっと軽トラ貸して」
「お?良いぞー?勝手に乗ってけー。カギはいつもの所に置いてあるからな」
「わかった。じゃ、借りるわ」
「ああ、おい悠二」
「ん?どしたー?」
「心優と買い物行くんならついでにポリデント買ってきてくれや。ほれ、1000円やるから残りは心優と二人で何か好きなもの買ってこい」
「はいよー。ありがとじいちゃん。」
「おう。気を付けて行ってこいよー」
「分かってるって。じゃーいってくら~」
よし。これで勝つる!
車なら早いし楽だし何せエアコンが付いてる!
一服したら行こう。
俺は玄関の前でタバコにライターで火を点けて煙を吹かす。
ふぅ。しかし暑いなぁ。こんなに暑いとビールが飲みたくなる。 そうだ。じいちゃんのくれた1000円の余りでビール買って来て、じいちゃんと心優と三人で昼間から一杯やろう。
よし決まり!
さぁ出発だ!
家の庭に停めてある軽トラに乗りエンジンを掛ける。
クラッチとブレーキを踏みながらギアを1速に入れてから半クラにして進み始めたらアクセルを踏む。
久しぶりに車を運転したが上手く行ったな。感覚は鈍っていないようで安心した。
運転していると前方にチャリを漕ぐ心優がいた。
チャリと並走しながら助手席の窓を開けて、
「バイビーww」
「あ!車なんてズルーい!」
「さらだばー!」
そう言うと颯爽と走り去りすぐにスーパーに到着した。
帰りはチャリを荷台に乗せて心優と二人で帰ろうと思っていたので駐輪場の近くに軽トラを停めてスーパーの入口から少し離れた喫煙所でもう一服しようと喫煙所に向かって歩いていた時だった。喫煙所の隣にある自販機に二人が立っていて何か揉めているように見える。よく見ると店員と客?の様だった。
さらに近づくと女性の店員とイカツイ中年の男性のようだ。
あ、あの人いつも俺がレジに行く子じゃん…。
さらに近付くと二人の会話が聞こえてきた。
「あり得ないでしょ!何で、金入れたのに出てこねー訳?」
「申し訳ございません…上の者がこの自販機の業者の方にただいま問い合わせていますのでもう少しお待ち下さい…」
「一体いつまで待たせるの?もう10分くらい待たされてんだけど?」
うわぁ…あんなアウトロー感バリバリのオッサン本当に居るんだ。逆にちょっとイタいな…
それを横目に見ながら通りすぎ、自販機の二人が見える位置にちょうどある灰皿で一服しながら様子を見守る。レジの子を見てみると今にも泣きそうな顔をしていてかなり困った表情だ。
「ったくよー。こんなガキに言うんじゃ無かったよ」
「…すみません」
「お前さ。さっきから謝る事しか出来ないの?」
「えっ…い…いえ…あの…」
「こんなクソみたいなバイト雇ってる時点でこの店の経営者の手腕もたかが知れてるな」
おいおい…経営者批判しちゃってるよ。
って言うかお前何様だよw
「おい、まだなのかよ!」
「すみません…もう少しだけお待ち下さい…本当に申し訳ありません」
「だからさぁ!テメェは謝ることしかできねぇのかって言ってんだよ!」
ガンッ!
オッサンが自販機を蹴ったお陰で物凄い音がした。
「キャッ!」
おいおい…流石にこれはやりすぎだろオッサン。
見ていたらレジの子と目が合ってしまった。
しょうがねぇな…。
「ねぇオジサン。その辺にしときません?」
「あぁ?なんだよテメェは!」
「まぁまぁ、そんな大きな声出さないで下さいよ。ビックリしちゃうじゃないすか」
「うっせぇな!関係ない奴は引っ込んでろ!」
「いい大人がこんな若い女の子いじめちゃイカンですよ?これ彼女が悪い訳じゃないんでしょ?それに凄い謝ってるじゃないすか」
「偉そうにガキが俺に説教垂れるのかよ!おい!」
「いや…こんな真っ昼間からみっともねぇなと思って」
「あ?テメェ顔覚えたからな?後で覚えとけよコノヤロー」
「あの…本当にすみません」
「だからよぉ!テメェは謝ることしかできねぇのか!クソガキがぁ!」
オッサンがレジの子に向けて蹴りを入れる動作をし始めた!
ヤバイ!そう思ったと同時に体が勝手に動いていた…。