2話
やっと着いた…すげぇ汗だくだ。
早くシャワー入りたい。
「ただいま~」
玄関を抜け、台所に行くと隣にあるリビングで高校野球を観ながらスマホを弄り、アイスを食べる全く持ってだらしない格好の妹がいた。
「おかえりー、マダオ」
「うるせー。長谷川バスターかけんぞバカ妹め」
「ちゃんと買い物出来た?」
「俺は子供かよ!買い物くらい出来るっつの!」
「どれどれ~?」
はい、よっこいしょ、とおばさんのような声を出しながら立ち上がり、台所まで来たコイツが俺の妹の長谷川心優。
大して可愛くない、へちゃむくれだ。今は大学の夏休みをエンジョイしている大学3年生。彼氏は知らん。我が妹ながら、家族もちょっと引くくらいのアニヲタであり、心優の部屋はアニメやゲームのポスターとフィギュアが至るところに置かれていて、ちょっとした魔窟になっている。なお最近発覚したがレイヤーでもある模様。
「あれ?夢と希望は?」
買った物を袋から出していた心優が言った。
「あ?なにそれ?」
「夢と希望だよぉ!メモにもちゃんと書いたのにー!」
「あれお前の落書きじゃなかったの?」
「は?ちげーし!今日発売のプリンあらもぉど先生が書いたBL小節!」
…腐女子でもあるらしい。
「知らんがな。なら本て書いとけよなー。って言うか兄貴にBL小節なんか買わせようとすんなや!レジするとき気まずいわ!」
「お兄ちゃんなら人間辞めてるし良いかなって」
「ひでぇなお前。俺に人権は無いのかよ…」
「だってマダオだもん」
「お、おう…」
「なんだ二人して。なーに騒いでんだー?」
「あ、じいちゃん。心優がさ…」
「お兄さまがねー?心優の頼んだ本を買ってこなかったのー!ひどいのよー?シクシク、グスングスン」
誰がお兄さまだよ…。一回シメたろうかなマジで。
「なっ!?何と!悠二!心優の本を買って来ないとは何事か!」
「だってコイツ、本のタイトルしか書かねぇーんだぜー?本て書きゃ良いのにさー。夢と希望なんて書かれてただけじゃわかんねーって。」
「お前、あのプリンあらもぉど先生、渾身の一冊を知らんのか!」
「知らねーよ!ってか逆にそんな幅広い年代に認知されてんの!?そのプリンあらもぉどって!」
「馬鹿者、先生を付けろ!先生を!」
「意味わからんわ…。わーったよー!そこまで言うんなら買ってきますよ。」
「よく言った!それでこそ男だぞ、悠二!」
「じいちゃんも男だけどな」
「お兄ちゃん私も行くよ」
「ん?どういう風の吹き回しだ?お前いつも面倒臭がって買い物なんて行かないのに」
「アイス無くなっちゃったから買うついでに百均で買い物したいから」
「は!?お前もうアイス食っちまったの!?昨日買ったばっかじゃねーかよ!」
「どうにも暑くてさー。気が付いたら無くなってたわー(笑)」
「俺まだ食ってねぇんだけど…」
「小さい事は気にしちゃダメだよー?」
「まぁいいや…。じゃあお前自分で本買ってこいよ。」
「え?なんで?」
「お前が百均行くなら俺行かなくて良いじゃん?ついでにアイスも買ってこいよな。」
「えー。でも私、か弱いから変質者に襲われたら怖いしー」
「どこが、か弱いんだ?逆に襲った変質者の方に俺は同情するけどな」
「それどういう意味よ!ねぇ!おい!マダオ!」
「いろんな意味で…」
「うーー!」
今、自分の妹とは言え、女の子にそんなこと言って俺が酷いとか思った人は大きな間違いだ。なぜなら…。
シュッ!っと言う鋭い音と同時に俺の腹部にとてつもない衝撃が走る…。そして数秒遅れてから来る鈍い痛み。
「むごあっ!」
とてつもなくマヌケな声と同時に床に倒れ込む俺。
見事に鳩尾に正拳突きが決まり数秒ほど息が出来ない…。
実は心優、華奢な体の癖に空手の有段者だったりする。
ヲタっぽい見た目からは想像出来ないくらい強い。前に2回暴漢に襲われたが2回とも襲った野郎を返り討ちにしており犯人逮捕に協力したとして警察から感謝状を貰ってたりする。
「何しやがる!バカ野郎!」
「…行くよね?」
「は?」
「行くよな?」
「何でだよ…」
「なら、もう一発カマしとく?」
「そんなんで俺が動くと思うなよ!」
「ふーん?じゃあ次は延髄に回し蹴り行ってみよう」
「…喜んで行きます」
「じゃあ行こ!お兄ちゃん!」
女って怖ええぇ…。