青年の以外な才能
焼き鳥屋を始めたのはいいが、誰一人として客が来ない。それもその筈、此処はかつて美しい場所だった。美しい場所に焼き鳥屋が有るとは誰が思う、しかも焼き鳥と濁酒しかメニューが無い焼き鳥屋。居るのは青年と魔女だけだ。
手始めに焼き鳥にされた小鳥達がこのままでは売り物にも無らなければ腐ってしまう。犠牲になった生命を腐らせて捨てるより、感謝して食べさせて頂こうと思った。きっと魔女も腹が減っているだろう。
「焼き鳥、食べますか?」
優しい青年の言葉に高飛車な魔女は
「そうだねぇ、ついでに濁酒も注いでおくれ。」
言われた通り焼き鳥と濁酒を差し出す青年、焼き鳥をアテに濁酒をスイスイと呑む魔女。
少し酔ったのか桃色の悪知恵を思いついたのか魔女は青年に焼き鳥だけ食べずに共に濁酒を呑もうと甘い声で誘う。青年は少し迷う、酒を呑んだ事も無ければ魔女は微妙な2.5D化だが絶世の美女だ。女性と食事もした事が無い。しかし女性の誘いを断るのは失礼だということは何となく分かるので青年と魔女は二人で焼き鳥を食べ、濁酒を沢山呑んだ。青年は驚いた。初めて呑む酒は以外にもスイスイと呑める、そして魔女へのお酌も手際よく熟せる。青年の中で何かが奮い立つ。
其れは青年の先祖が歌舞伎町の元No.1ホストで、先祖の血が騒いだのだった。