彼女の足元を狙え!
翌朝、すっきりと目覚めると、まずはしゃもじのもとを訪れた。
複雑に入り組んだ段ボール箱を数えながら私はしゃもじのもとへ向かった。
二度ほど迷子になった。
そのたびに元の道へ戻り、ぐるぐると回遊しては再度チャレンジするといった具合で、しゃもじのもとを訪れたときには息が上がっていた。
しゃもじは「まずはそこの奥だな」
と頭で指し示した。
ビニール袋がたくさん積まれていて、いかにも危険そうな香りが漂っていた。
昼過ぎに彼女は起きてきた。
台所に立つ彼女の足元を隠れ蓑にして、私は袋に飛びかかった。
――固い。
噛みつこうとしたのだが、なにか固いものが入っており、私は噛みつくのを断念した。
袋は大きく競り上がり、中から円柱状の何かが出てきた。
「俺に噛みつこうとしたのはお前か」
凍りつくような声で問われる。
私は再び彼女の足元に隠れ、様子を見ていた。
しゃもじが
「あいつをやっつければダンジョン攻略だ!」
と言ったが、私は足がすくんで動けなかった。
「お前が俺を眠りから覚ましたのか?」
凍てつくような声で円柱は責めてくる。
私はありったけの勇気を出して言った。
「私です。あなたたちにはその場所を去ってもらわねばなりません」
「ああ?なんだって?聞こえねえなあ」
袋の中に入っている円柱たちも騒ぎ出した。カラカラ音を立てて威嚇してくる円柱たち。
金属の音があまり得意でない私にとってはこれとない脅しになる。
色とりどりの円柱たちが私を脅してくる。
自身を鳴らすもの、隣のものと共同で鳴らすもの、色々だ。
私はビビってしまい、さらに彼女の足元に隠れてしまう。
しかし、上からしゃもじが言った。
「みーちゃん、いまのうちに猫パンチをお見舞いするのです!」
私は
「くぅ」
と言って一呼吸置くと、それを繰り出した。
「みーちゃーんパァンチ!!」
テチテチテチテチ!!
そのパンチは円柱たちにヒットする。
崩れ落ちる円柱たち。
「やった……!!」
しゃもじがそう叫んだとき、彼女が後ろを向くと私に言った。
「みーちゃん、缶々で遊びたいの?でも危ないからだめよ。」
遊びたいの……?私の本気の猫パンチが見えなかったと?
そうか、早すぎて彼女には見えていなかったんだ、そうなんだ。
「代わりにこれをあげるね」
報酬はペットボトルのふただった。
ころころ転がってとても面白い。
とりあえず彼女は考えた末、その缶たちを袋に詰め込み捨てる準備をした。
私がいなかったら、そこも片付いていなかったのだろう。