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プロローグ
東京都中野区
西武新宿線の急行が止まらない小さなまち。
駅から徒歩五分
昔ながらの総菜屋、八百屋、ラーメン屋が並び
少し懐かさを感じる商店街。
その一本隣の道沿いに
イギリスの一軒家にも見える建物が
二軒並んで立っていた。
向かって右側に建つ家は
一階の前方部分が美容室になっており
その家の主人がひとりで営んでいるようだ。
左側の家の前にはレトロなポストが6つ
玄関にはインターホンが6つ
ここは隣の美容室を営む主人が
貸出している女性専用アパートだ。
1日中、不動産屋の営業トークを聞かされ
都内を回っていた花見は
眠そうに車を降りたが
すぐに疲れを忘れ
足早に玄関までかけていった。
ステンドグラスのついた共同玄関のドアをあけると
古い木の香りと、ドアをあけて舞ったほこりで
なんともいえない、古い洋館のあの感じだ。
ステンドグラスの窓から入るカラフルな日差しで
二階へと続く螺旋階段がキラキラして見えた。