黄金騎士の隊列へ加わる近衛騎士団。
黄金騎士の隊列へ加わる近衛騎士団。
黄金騎士の行軍を阻止することに失敗した黒馬暗殺団。
彼らは一旦、城塞都市へ引き返し作戦を練り直すことにした。
同心円の堀に架けられた跳ね橋が下ろされ高い城壁に囲まれた城の中へと入って行く。
報告を待つ野蛮王の元へと重い足取りで向かう黒馬暗殺団。
彼らは宮殿の間で王座に座る野蛮王の前に、かしずいた。
それから黄金騎士の一行が間近に迫っていることを報告し、新たな策を提案した。
『野蛮王様、黄金騎士には、この地に詳しい知恵者が配下に着いているようでございます。』
『奇襲は失敗に終わりましたが、今一度、機会をお与えくださいませ。』
『前哨砦の城壁で黄金騎士の行軍を阻止してご覧にいれます!』
野蛮王の傍らに立つ黒魔術師が何やら彼に耳打ちをする。
しばらく考えを巡らし頷き黒魔術師に巨人オーグを召喚することを許可した。
『この度は、この黒魔術師がお前たちと共に参る。』
『二度と失敗は許されぬぞ!』
『黒魔術師の指揮のもと黄金騎士の行軍を何としても阻止せよ!』
野蛮王の身を刺すような、この言葉に頭を項垂うなだれて宮殿の間を後にする彼らの表情は暗かった。
頭から足の先までローブで身を包む黒魔術師が柏ノ木の杖を持ち黒馬暗殺団を先導する。
『さぁ、参りましょう。』
か細く高い若い女性の声に顔を見合わせる黒馬暗殺団。
『女……しかも、小娘の下で働けと』
『黒馬暗殺団も地に落ちたものだ。』
『これでは、褒章の爵の地位も、領地の割譲のも怪しいものだ。』
中庭に出た黒魔術師は柏ノ木の杖で大きく地に円を描き何やら呪文を唱えた。
すると、その円の中央から次々と巨人オーグが現れ出た。
その様相は、この世のものとは思えない、まさに見上げるような異形の怪物である。
オーグの一人が黒魔術師を肩に乗せて前哨砦の城壁へと先導する。
黒馬暗殺団は弓を片手にオーグの後に着き従って行った。
前哨砦の城壁の前に、たどり着いた黒魔術師とオーグそして黒馬暗殺団の一行。
彼女(黒魔術師)はオーグに命じて城門を開けさせた。
ギギギギギ………………
『?…………』
黒馬暗殺団は、互いに顔を見合わせて黒魔術師に訊ねた。
『黒魔術師殿、なぜ、城門を開け放たれた?』
彼女は、高笑いをして彼らの問いに答えた。
『野蛮王は、わたくしめに領地を割譲するとお約束された。』
『あなた方にに授けるはずあった爵位も領地も、すべて、わたくしが、もらい受けます。』
彼女は柏ノ木の杖を振り巨人オーグに命じて黒馬暗殺団を城門から外へと押し出し門を閉ざした。
『黒魔術師!!』
『裏切ったな!!』
閉ざされた城門の外で黒魔術師の仕打ちに地団駄を踏む黒馬暗殺団。
城壁の上から薄笑いで下を見ている黒魔術師。
巨人オーグを操り大岩を黒馬暗殺団の頭上に投げさせた。
ドドーーーーーン)))))
ドドーーーーーン)))))
ドドーーーーーン)))))
これに、たまらず城門の側から離れ逃げ出す黒馬暗殺団。
彼らは跳ね橋を下ろし巨人オーグが投げる大岩が、届かない場所まで避難する。
すると石橋を渡り行軍してきた黄金騎士の一行と、その場で鉢合わせとなった。
『黒馬暗殺団だ!!』
『戦闘体型!!』
騎士団の長老が弓隊を前列へ呼び寄せた。
大男が棍棒を持ち黒馬暗殺団に叫ぶ。
『おめーら!!』
『このオレが黄金騎士様には指一本ふれさせねーぞ!!』
四面楚歌の状況に黒馬を降りて弓と剣を投げ出し戦意を喪失した黒馬暗殺団。
黄金騎士が前に出て弓隊を後ろへ下がるように命じた。
司の剣を大男に預けて、その場で待つように指示した黄金騎士は一人で黒馬暗殺団の元へと歩き出した。
『黄金騎士様!!』
『あぶねぇーよ!!』
後を追う素振りを見せた大男の手を引く吟遊詩人。
『心配ありません。』
『あの方にお任せしましょう。』
しゃがみこむ黒馬暗殺団の長らしき者が黄金騎士が一人で剣も帯びず歩み寄って来るのに気づいた。
『な、なんと!』
『黄金騎士が一人、丸腰で来るぞ!』
黄金騎士は黒馬暗殺団の間近まで来て彼らに語った。
『恐れることはない。』
『私は剣を帯びておらぬ。』
『あなた方を害するために来たのではなく、救うため、友を得るために来たのです。』
『さぁ、立ちなさい、愛する兄弟ちよ。』
黒馬暗殺団は黄金騎士の言葉に驚いた。
『オレたちは、あんたを殺そうとした黒馬暗殺団だ!』
『そのオレたちを、兄弟と呼び愛し友と呼んでくれるのか?』
黄金騎士の後ろに立つ吟遊詩人を見て黒馬暗殺団の長が顔を隠した。
吟遊詩人が黒馬暗殺団の長の顔を認めて叫ぶ。
『お兄様!!』
吟遊詩人の声に、どっと肩を落として崩れる黒馬暗殺団の長。
黄金騎士は優しい口調で彼に語った。
『私に出会ったこの瞬間に、あなた方の心から悪は去りました。』
『私と共に戦いのない世を創るのです。』
黒馬暗殺団の長を優しく支えて吟遊詩人の待つ隊列へと連れて行く黄金騎士。
この地の王族である兄と妹の再開である。
黒馬暗殺団の長となっていた兄は涙ながらに吟遊詩人の妹に語った。
『すまない……野蛮王に両親の命を握られている以上、逆らえず、このような姿に身を落としてしまったのだ。』
黄金騎士は二人の手を、しっかりと握らせた。
『これよりは、騎士団として私の隊に加わりなさい。』
『そして、地下牢に囚われている、ご父母を救いだし平和な王国を取り戻すのです。』
黒馬暗殺団は黄金騎士の前にかしずき、忠誠を誓った。
『我らは、これより黄金騎士様の近衛騎士団としてお仕えします!!』
新たな仲間を加えた黄金騎士の一行は城塞都市の城門へと歩みを進めた。