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名も無き将軍の物語  作者: しまりす
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賊の大男と黄金騎士の出会い。

賊の大男と黄金騎士の出会い。①


戦いのない夢幻世界を目指し進む黄金騎士と彼に従う騎士団の一行。


先行していた斥候の馬が彼の元へと走り寄って来た。


『黄金騎士様、この先にある村で何やら騒ぎがあったようでございます!』


『村人の話しによりますと大男が矛を振りかざし幼子を人質にしておるとのこと。』


騎士団の長老の一人が黄金騎士に近寄り話し掛けた。


『黄金騎士様、賊と関わりあっては無駄に戦力を失ってしまいます。』


『ここは、迂回して本国を目指された方が賢明かと。』


周りを取り囲む他の長老たちも彼の言葉に頷いた。


黄金騎士は長老の一人にゆっくりと語った。


『私に善を施した人に善で報いても、それは諸国の人々が行っていることと同じです。』


『私の使命は悪に手を染めた人に善を持って接することです。』


『剣によって制するものは剣によって倒れる』


『黄金騎士の進むところ人々の心に楽園の花を咲かせねばならない。』


『このまま、先へ進みましょう。』


『私の思いに賛同する者たちは着いて来なさい。』




賊の大男と黄金騎士の出会い。②



村の入り口の門をくぐる黄金騎士の一行。


しばらく進むと村の中央に位置する広場に人だかりができていた。


村の男たちは手に鋤や鎌や斧、そして女や子供たちは石を持って何やら叫んでいた。


幼子の泣き声と、男の低い怒号の声が交互に黄金騎士の耳にも届いた。


騎士団の一行が近付いて来るのを見た村人たちは道を開け両側に散った。


村長らしき者が騎士団の先頭に駆け寄って訴えた。


『騎士団の皆様、どうかワシらの窮地をお救いくださいませ!』


村長は幼子を捕まえて矛を振るう大男がいる広場の中央を指差した。


長老団の一人が弓隊を前列へ呼び寄せ大男へ照準を合わせた。


この様子を見た賊の大男は更に興奮し幼子を片手で頭上に上げた。


白馬に乗った黄金騎士が弓隊の前に進み出た。


『弓を下ろすのです!』


『力による解決は、必ず流血の結末となる!』


黄金騎士の言葉に弓を納め後ろへ下がる騎士団。


黄金騎士は白馬を降りて村人たちの中へと入って行った。


ぐるりと辺りを見回して黄金騎士は村人たちに語った。


『手に鋤や斧、鎌を持っている者は、それを地面に置きなさい。』


『手に石を持っている者は、それを捨てなさい。』


『力よっては何も解決しません。』


黄金騎士の言葉に村人たちは言われた通りに鋤や斧、鎌を置いて、石を捨てた。


その後、黄金騎士は己の司の剣を長老の一人に預けて、ゆっくりと賊の大男の元へと歩みだした。


『それ以上、近付くな!!』


『このガキの命はねぇぞ!!』


賊の大男は矛を幼子の喉元に、あてて黄金騎士に怒鳴った。


幼子の母親らしき婦人が黄金騎士の足元にしがみつき涙を流し懇願した。


『人徳の黄金騎士様!』


『どうか、娘をお救いくださいませ!』


黄金騎士は、ゆっくりと婦人を支えて立たせた。


『婦人よ、あなたの子を思う涙が必ず幼子を救うでしょう。』


黄金騎士は両手を広げて賊の大男へと近付いて行った。


『恐れるな、我、兄弟よ!』


『私はあなたを、害するために来たのではありません。』


『あなたの心に巣くう悪を払い除けるために使わされたのです。』


『さぁ、矛を置きなさい』


『幼子を私の元へ引き渡すのです。』


『その時、あなたの心に巣くう悪も退散するでしょう。』


『あなたの身の安全は、この黄金騎士が補償します。』


賊の大男は威厳に満ちた黄金騎士に、たじろぎ茫然としていた。


矛先が届く範囲まで来た黄金騎士は右手を差し出し賊の大男から矛を受け取った。


幼子は逃がされ母親の元へと走り去った。


その様子を見ていた村人達が、再び石を拾って賊の大男に投げつけた。


『悪党を殺せ!!』


『石打にしろ!!』


村人達は口々に叫んで賊の大男に嵐のように石を浴びせ掛けた。


黄金騎士は村人達の投げる石から賊の大男をかばうように身を、ていして彼を守った。


『止めるのです!!』


『この者の心から悪は去りました!

!』


『あなた方の中で、一度も罪を犯したことがないものが、いれば石を投げなさい!!』


村人の石を投げる手はピタリと止まった。


村長に促され、村人達は、それぞれの家へと戻って行った。


黄金騎士は賊の大男の額から流れている血を拭き取り薬を塗り包帯をして彼に温かいスープを与えて休ませた。


強面の賊の大男の表情は消えて、穏やかな壮年の男へと彼は変わっていた。


『あなた様は、神のお使いなのですか…………』


黄金騎士は彼に穏やな声でに答えた。


『私は、あなたの兄弟です。』


『さぁ、私と、ともに来なさい。』

『私と共に、この地に戦いのない楽園を創るのです。』



この時から、賊の大男は黄金騎士の片腕ともなる有能な騎士団の一人となった。



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