異世界に来たらまずは宿屋を探す
高校2年の夏も終に近づいた頃俺の携帯電話に一通の送り主不明のメールが届いた。
メールには「今から君を異世界へと導こう」と書かれていた。
メールを見た瞬間俺の全身が光に包まれ意識が遠のいた。
目が覚めたのは森の中だった。ここはどこだろう?
少なくとも俺が住んでいた街とは違うことだけは確かだ。
とりあえず人に出会わなければと思い歩き始めた・・・・・あれこれどっちに行ったらいいんだろ?まあいいか(笑)
20分ほど歩くと村が見えてきた。
とりあえずその村に入ってみることにした。
村に入ろうとすると簡素な鎧を着た男性がこちらにやってきた。門番だろうか?
「許可なく村に入ることはできない。一度こちらに来て身分証明をしてもらう」と言われたので大人しくその男について行った。男は村の入口のそばにある家へと入っていった。俺もそれに続く。
家に入ると椅子に座らされ質問が始まった。
「名前は?」
「屋嘉比 劉です」
男は紙にヤガイ リュウと書いていた
「身分は・・・冒険者でいいな?」
ゲームの冒険者のようにモンスターと戦う人達のことだろうか?良く分からないので考えを放棄した。
「・・・・・そうだ」
一瞬言い淀んだが不審には思われなかったようだ。
男は冒険者と紙に書いてその二つだけを聞くと開放してくれた。
「ここはソルトという村だ。初めて来るのか?」
「ええ、初めてです」
まぁこの村と言うかこの世界が初めてなんだが・・・・・
「そうか始めてか、この村を案内しようか?」
おお、この人優しいと思ったが次の一言でやめた。
「案内料は100グールだ」
おい金取るのかよ、てか金なんて1円も持ってねえよ。いやこの世界ではグールか。
「いえ案内の必要はありません」
ここは断っておくことにした。
「そうか、出ていくときには何もしなくていいが無断で入ろうとした場合国の掟により貴様を罰せねばならないからな」
この世界では勝手に村に入ることは許されないのか・・・・・
「わかった」
改めて村に入る。
入口近くに広場があったのでそこへ行った。
今わかっているのは、ここが異世界だということだけだ。
そう言えばなぜ門番の村人は俺を冒険者だと思ったんだろう?
ふと気になったので身に着けているものを確認してみた。
服はメールを貰った時と同じ格好だったが腰に見慣れない剣と巾着袋があった。なるほどこの剣を見て門番は冒険者だと判断したのだろう。巾着袋には銅貨が10枚と銀貨が10枚入っていた。この世界のお金グールだろう。数え方がわからないが・・・・・
持ち物はそれだけだった。
これからどうしようかと途方に暮れていると背後から声が掛けられた。
振り返ってみると30代くらいの女の人が立っていた。
「どうかなされたのですか?」
と声をかけられる
「えっと、今日の宿を何処にするかと悩んでいまして・・・・・」
「でしたら私の家に来ますか?」
おぉ、家に止めてくれるのか。
「いいんですか?」
「えぇ、私の家は宿を経営していますので」
ガーン、まぁそうだよな・・・・・見ず知らずの奴を家に止めてくれるわけないよな・・・・・はぁ
「お金がこれだけしかないのですが大丈夫ですか?」
何はともあれ宿に泊まれるのならそれでいいかと思ったがお金が足りなくては泊まれないので質問してみた。
「えっと、所持金額は1010グールですか?」
なるほど銅貨1枚1グール銀貨1枚100グールか
「えぇ、これだけしかありません。もしかして足りないのですか?」
これで泊まれなかったら今日は野宿になってしまう。
「いいえ、大丈夫ですよ」
よかった、宿に泊まれるのでほっとした。
「では、案内しますのでついてきてください」
女の人が歩いていくので付いて行った。
歩くこと5分一軒の家に案内された。
「ここが私の宿屋です」
中に入ると意外と広かったが部屋数はそれほど多くなかった。見えるところだけで5部屋くらいだろう。
「あの、1泊何グールですか?」
さっきは大丈夫と言ってくれたので心配はしていないがここで金の大半を使用したら今後どうするかが不安だ。
「1泊100グールです」
安っ、思わず突っ込みたくなってしまったがこの世界では100グールでも高いのかもしれない。
「食事はついているのですか?」
食事がついているか不安なので聞いてみる。
「いえ食事は含みません」
ですよねー、やっぱり100グールは安いのか・・・・・
「食事代込ですと1食あたり25グール増えます」
25グールで1食分か。
宿代の4分の1か・・・・・少し高いような気もするがまぁいいか。
「では今日の夕食と明日の朝食を付けてくれ」
「かしこまりました。お湯はどうします?」
「お湯?」
「はい、体を拭くときに使うお湯です。桶1杯で50グールです。」
この世界では風呂は無いのか。
「頼む」
「合計200グールになります」
銀貨2枚を差し出し鍵を受け取った
部屋の鍵を貰い、ふと思ったので訪ねてみる。
「あの、ここらで稼げる所ってないですか?」
女の人に訪ねてみるが訝しげな視線を浴びた。
あれ、おかしなこと言ったかな?
「えっと、貴方は冒険者なのですよね?」
「ええ、そうですが?」
余計訝しげな視線を受ける。
「ならば村の外へ行って魔物を倒してドロップするアイテムをお売りになればいいのでは?」
あ、なるほど冒険者なのだから外で魔物を倒してドロップするアイテムを売れば稼げるのか。だからあんな視線を・・・・・
「い、いえ、そうではなくて、そのアイテムを売れるところはと・・・・・」
苦し紛れに言ってみたが女の人は納得のいった表情になった。
「そうでしたか、アイテムを買い取ってくれる場所はこの宿から左へ5件隣の家です。」
左へ5軒か、覚えておこう
「ありがとうございます」
「いえ、おかまいなく」
挨拶をして鍵についてある番号の部屋へと向かった。
部屋はそれほど広くはなかったが、狭いというほどではなかった。
窓際にベッドその横にクローゼット、部屋の中央にテーブルとイスがあるだけだった。
窓から外を眺めると陽が傾きつつあった。
歩いてばかりで疲れていたので横になった。
多分もうあの世界へは帰れないのだろう。まぁ別にあの世界が好きなわけではない。
俺、屋嘉比 劉の家計はとても貧しかった。
父は昔負った事故の後遺症により働けなくなり酒に溺れ毎日怒鳴ったり暴れたりしていた。そんな父をなんとか支えようと母は朝も昼も夜も働き体を壊して半年前他界した。
残された俺は母の残してくれた貯金を切り崩し、バイトしてなんとか生計を立てていた。母を殺したあの父がいる世界よりこの世界の方がどんなに楽なことか、と考えていると部屋の扉がノックされた。
「失礼します、食事とお湯を持ってきました。」
扉が開き女の人が入って来て食事をテーブルに置き、床にお湯の入った桶を置いた。
「桶と皿、コップは扉の外においておいてください」
とだけ言い残し出ていった。
食事はパン2個と水だけだった
25グールでこれだけか、少ないな・・・・・
その後桶に入ったお湯と部屋にあったタオルで体を拭きドアを開き扉の外にお湯と皿とコップを置きベッドに横になった。今日は疲れたのか俺の意識はそのまま遠のき眠りに入った。
翌朝目を覚ましたのは陽の出前だったようだ。
伸びをしてベッドから出てクローゼットに入れておいた上着を取り出して着た。
すると、1枚の紙が上着のポケットから落ちた。
紙に書いてあるのを読んでいった
ようこそ異世界へ
いきなりこんな異世界に呼ばれて迷惑してるかな?まぁ、君を無理矢理異世界に連れ込んだのだからお詫びくらいはさせてもらうよ。
今日泊まっているその宿に武器とこの世界に関することを書いた説明書を送ったからね。
と書かれていた。
俺が寝ている間に誰か入ってきたのか?訝しんでみたが異世界に連れてくるだけの力があればこんな紙の1枚くらいはどうにでもなるのかと思い考えを放棄した。
それから数十分後に部屋がノックされ女の人が入ってきた。
朝食と小包を持っている。
「朝食を持ってきました。後こちらは朝カウンターに置かれていました貴方宛にでしたので持ってきました」
さっきのメモに書いてあった武器と説明書だろうか?
朝食と小包をテーブルに置き去っていった。
朝食は昨日と同じパン2個と水だった。
食べ終えてから小包を開けてみると中には剣と紙が1枚入っていた。
剣を持ってみると意外と重たい。これは両手剣か?剣をテーブルに置き手紙を読んでみる。
この世界では初めての村や街に入るときは名前と職業を紙に書いて提出しなけばならない。もしこれをしなかった場合、国の掟により5万グールの罰金とその村や街へ1年間入ることが出来なくなる。この世界での1年は君の元いた世界と同じだから安心してね。もちろん1日の時間もだよ。
そして、この世界では魔物を倒す職業「冒険者」がある。魔物は村や街の外でも湧くけど地上に出てくる魔物は弱いから迷宮にでも行ってみるといいよ。そうそう、この紙と一緒に送った剣は「聖剣カラドボルグ」だから丁重に扱ってね♪低級の魔物なら一撃だから安心だね!
最後に一言「この世界で楽しく自由に生きてね〜」
と書かれていた。説明書って言うくらいだから期待したのに。掟は昨日聞いたし、まぁ罰則は知らなかったからいいけど・・・・・それに聖剣を貰えるのは嬉しいな低級の魔物なら一撃とは流石だな。
俺は早速聖剣を持って村の外へと魔物を狩りに行った。
まだ続きますのでこれからもよろしくおねがいしますm(_ _)m
更新は不定期です