隠された秘密
「火竜ちゃん、ご飯よ」
三つ編みを両肩に垂れ下げた二十代半ばの女が、ニコニコしながら、家の階段を上っていく。
「ひたつちゃーん」
二階の薄暗い部屋で、そのひたつちゃんは、サングラスをして、簡素な椅子に寄りかかっている。
「…姉貴。ちゃんは、もういいんだよ。」
姉貴と呼ばれた女は、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をして、…様するに、驚いた顔をして呆然としていた。
「火竜ちゃん、いつから火竜ちゃんじゃなくなったの?」
今度は、火竜ちゃんが、鳩が戦闘機から核攻撃を受けた様な顔を、…大変驚いたということだ。
「火竜が本名だけど、ちゃんはおまけだろ?おまけは、お子様が喜ぶものであって、俺はお子様じゃない!」
姉貴は、目を泳がせ、戸惑い、天井に目をやった。
「わ、わかったわ。じゃ、お父様から、預かったお小遣いは、大人になった貴方には、必要ないものだわ。これは、お父様に返します」
火竜は立ち上がり、精一杯、体で悲哀を表現した。
「お父様からの貢ぎ物は頂かないと、お父様に失礼じゃないか!今が江戸時代であれば、越後屋からのお饅頭は、頂かないと、世の中がおかしくなるんじゃない?…かな?」
「…ひたつちゃん」
「よくわかったね、僕がひたつちゃんだ。さっさと、お小遣いをよこしなさい」
「…ひたつちゃん!」
「何だ、よこせ!!」
安堵をした姉貴は、踵を返し、部屋を出ようとした。
火竜は、サングラスを外し、死んだ目をした眼差しを、姉貴の背中に突き刺す。
「…テメェ、使い込んだのか?」
STAR EYES#1
キャラクター原案
クロエ恵