08.明太子のクリームスパゲティ
途中、変な愚痴が入っていますが、これは作者の主観的な考えです。
実際にそういう人が居たりするから性質悪いんですがねぇ。
まぁ、こう思う人も居るので注意をば。
本日、朝からおっちゃんは何時に無くソワソワと玄関の方を気にしていた。
何故なら、かねてより注文していた商品が今日届くと連絡を受けていたからだ。
その商品は、王都から遠く離れた海辺の近くにある都市でのみ作られている物で、とある魚の卵を唐辛子等を混ぜて作った特別なタレで漬け込んだ物だ。
その商品の名前は《辛子明太子》
そのまま熱々のご飯に乗せて食べても良し、軽く焼いて半生のミディアム状態にして食べても良し、他にも色々な使い方が出来る物で、おっちゃんの中では万能食材の1つとして数えられている逸品である。
その都市には《辛子明太子》を扱っている専門店は数多くあるが、店により同じ《辛子明太子》でも少しずつ味が異なる。
その為、おっちゃんは幾つもの店を回って好みの味の物を販売している店を探し回り、納得出来る好みの味の物を作っている店を見つけ出した。
そして、その店に頼み込み、定期的に《辛子明太子》を送ってくれる様に発注し、常に確保出来る様にしていたのであった。
《辛子明太子》は、主材料が魚卵であり唐辛子等を混ぜた独特のタレに漬け込んでいる為、風味に少々癖があり人によって好みが分かれるが、おっちゃんの好物の1つである。
常に一定量確保していたのだが、おっちゃんに隠れてアルテミスのメンバー達も秘かに食べていたらしく、気が付いたら底を尽いていたのだ。
《辛子明太子》は、大体の消費量が分かっているので、数ヶ月置きに一定量配送してもらう事になっており、次が来るのは当分先の事だ。
そして、普段からあると思っている時は、それ程気にもならないのだが、いざ無くなってみると無い事が逆に気になり、非常に気になって必要以上に欲しくなる。
毎日欠かさず食べている訳でも無いが、他人が食べている物を見ると無性に美味しそうに見えて食べたくなる事と同じ心境だ。
そういった理由で懇意にしている店に急遽連絡を取り、特別に送ってもらった物が今日届く予定だと聞いた為、朝から待ち構え今に至る。
「まだか?まだか? 遅くないか? もしかして、来る途中で盗賊にでも襲われて積荷が奪われたりしたのか? それとも慣れない場所で迷っているのか?」
そんな事をつぶやきながらグルグルと室内を歩き回る姿は、冬眠明けの熊か腹を空かせた魔物の様にも見える。
ただし、言っている事は熟練の高ランク冒険者とは思えない程情けない内容だが。
そんな風にソワソワしたまま家の掃除をしたり、武具の手入れをしながら待っていると、遂に待ちわびていた声が玄関口に響き渡った。
『すいませ~ん、猫耳娘の宅急便で~す。 お届け物を持ってきました~』
「はいはいはいはいは~~~いっ!」
その声を聞いた途端、瞬時に玄関まで移動するおっちゃん。
移動時に身体強化の魔法まで使う辺り、その期待度は推して知るべし。
まぁ、他人が見たら相当大人気ない行動だとは思うのだが。
「はいっ! 待ってたよ~!」
バタンッ!と扉が壊れるかと思う程の勢いで開け放つ、いい笑顔をしたおっちゃん。
それを見て若干引き気味の若い猫耳の獣人娘の配達員。
営業用の作り笑顔も口元が引きつって見える。
しかし、そこはそれ。
プロ根性で丁寧に応対する配達員。
『では、此処にサインを。 はい、ありがとうございました。 品物は、こちらで間違いございませんね? では、今後ともご利用よろしくお願いしま~す』
荷物をおっちゃんに渡し、受領のサインを貰った配達員は、それ以上何も言わず何も聞かずにそそくさと立ち去っていった。
触らぬ神に祟り無し。
わざわざ、藪を突いて蛇を出す必要など無いのだから。
待ちわびていた物が届きテンションが上がったおっちゃんは、その様な事を思われているとは知らず、すぐにキッチンへと移動していった。
「やっと届いたぞ~ さ~て、早速食べるとするかな」
「しかし、どうやって食べるとするかなぁ」
「熱々ご飯にそのまま乗せて食べても美味しいけど、まだ食事時までは時間もあるし、折角だから少し手を加えて食べたいな」
「よっし、今回は、作るのも簡単で時間も掛からないのに見た目もおしゃれっぽく見えるパスタにするか」
「《辛子明太子》も届いたばかりで沢山あるし、たっぷりと使って美味しく食べるとするか~」
作る料理を決めたおっちゃんは、《辛子明太子》を取り出して調理を始めた。
・明太子のクリームスパゲティ・
「さて、まずは辛子明太子の下ごしらえだな」
そう言って、おっちゃんはまな板の上にラップを広げだした。
「そのまま調理し始めると、まな板に辛子明太子のタレや匂いが染み付いたりして後片付けが面倒になるからなぁ。 とりあえず、ラップしときゃ防げるからな」
そして、取り出した辛子明太子に縦に包丁で切れ目を入れて左右に割り広げ、次に辛子明太子の端を掴んで固定して、包丁の背中部分を押し当ててゆっくりと引き、辛子明太子の薄皮から中身をこそぎ取っていく。
「そのまま使っても別段問題は無いけど、薄皮とかが残っていると凄い食感とかが悪くなるんだよなぁ。 ちょっと手間だけど中身だけ取り出しておいた方が美味しいからな~」
そんな事をつぶやきつつ、次々と辛子明太子に切れ目を入れてから包丁の背で中身をこそぎ取り、取り出した中身をボウルに入れていく。
「よっし、これで殆ど準備は終わった様なもんだな。 残りもチャッチャと済ませてしまうとするか~」
「今回は、クリームスパゲティにするつもりだから牛乳だな」
「まぁ、本当なら生クリームを使うんだろうけど、生クリームだと濃厚過ぎて辛子明太子の味がぼやけたりするから牛乳の方が美味しいんだよな~ カロリーが気になるんだったら豆乳でも美味しく出来るだろうな」
辛子明太子を入れたボウルに牛乳を注ぎいれるおっちゃん。
「大体の目分量だけど、1人前で牛乳を150cc位入れりゃ良いかな~? ま、ソースが少なめの方が好きな人もいれば多い方が好きな人もいるから、その辺りは好みで調整だな」
「次は、卵を入れて混ぜ合わせてっと」
辛子明太子と牛乳を加えたボウルに更に卵を割りいれ、ダマが出来ない様に泡立て器でよく混ぜ合わせる。
「混ぜ合わせている途中で時々泡立て器を持ち上げると取りきれなかった辛子明太子の薄皮や卵の殻座とか混ざり切れない卵白なんかが泡立て器に付いてくるから、そういう物を取り除くと出来上がった時の舌触りが良いからな~」
「そして、最後の味の調整として、塩、コショウを軽く振って味見っと」
明太子のクリームソースに仕上げとして塩、コショウを軽く振り入れてから味を見てみると納得した味になった様だ。
ウンウンと頷きながら明太子のクリームソースが入ったボウルをコンロのすぐ脇に置くおっちゃん。
「っと、これで明太子のクリームソースの出来上がりっと」
「後はメインになるパスタを茹でればほぼ完成だな」
そうして、おっちゃんは大きな鍋に水をたっぷりと入れ、それをコンロにかけて沸騰するまで熱していく。
「おっと、忘れちゃいけないお塩投入っと」
鍋に入れた水の大体10%位の量の塩を鍋に入れるおっちゃん。
「よし、沸騰したしパスタを入れるとするかな」
「パスタを入れたら、最初の方は軽く混ぜながら茹でていくとパスタ同士がくっ付くの防げるから、パスタを入れてすぐ放置は駄目駄目だわな~」
「後は、パスタを入れてから鍋からお湯が吹き出そうになったら火を弱めて~」
「茹で上がりの目安に関しては、今回はクリームソースと合えるから、少し芯が残る位の方が美味しく出来上がるから、表示時間よりも1分位早めに引き上げるつもりで良いな」
「ペペロンチーノとかみたいな炒めたりするタイプなら茹で過ぎてフニャフニャにならない限りは気にしなくて良いんだがなぁ」
そのまま、おっちゃんはパスタを茹でながらブツブツと愚痴めいた事をつぶやき出した。
「高級店とか専門店じゃない家庭の料理に対してアルデンテとか気取った事言うて文句言う奴は、頭おかしいとしか思えないよなぁ」
「お前、何処のグルメレポーターか食通様?て思っちゃうよな~」
「むしろ、そんな事言う奴に限って、味音痴とかが多い気がするのは気のせいかねぇ?」
「突然、ウンチク語ったり、一口食べて「この料理には○○が使われているね?」とか言ったりするのがな~」
「まぁ、ウンチクは聞き流せば良いんだけど、材料に関してはドヤ顔で使ってない物を言ってくるのは本当にお前味分かるの?とか思っちゃうよなぁ」
「本当にああいう輩は理解出来ん」
昔の嫌な出来事を思い出したのか、背中に黒いオーラを浮かべながらブツブツと言い続けるおっちゃん。
その姿を見ていた者が居たら、即座に逃げ出すか無関係を装う位危ない姿だった。
「おっと、変なスイッチ入っちまったな。 うん、大体パスタの茹で具合も良い感じだし、仕上げていくとするかな」
気を取り直したおっちゃんは、茹で上がったパスタをトングで掴み、大雑把に水切りしたら、明太子のクリームソースが入ったボウルの中に入れて混ぜ合わせていく。
「料理本とかだと、フライパンとかに移したパスタにクリームソースを加えて、弱火から中火で温めながら混ぜて作るって書いてあるのが多いけど、その方法は加熱しすぎて卵が固まってボソボソしたりして失敗する事が多いんだよな~」
「他にも余熱で~とかも、やってみると結構難しくて失敗する方が多いからなぁ」
「ぶっちゃけた話、全ての材料が生で食べても問題無いんだし、失敗する位なら茹で立ての熱々のパスタをクリームソースに入れて混ぜた方が失敗知らずで美味しく出来上がるんだよな」
「最後にコクと風味を出す為にバターも加えてよく混ぜてっと」
明太子のクリームソースと茹で立て熱々のパスタ、バターをよく混ぜ合わせ、全体に行き渡ったら器に取り分けて盛りつけていく。
「よ~し、これで明太子のクリームスパゲティの完成っと。 後は好みで刻み海苔を乗せれば良いしな」
完成した明太子のクリームスパゲティを食卓に移し、早速食べ始めるおっちゃん。
「ん~♪ これだよ、これ。 やっぱり美味しいな~」
待ちわびていた辛子明太子を食べ、ご満悦のおっちゃん。
その後、おっちゃんの家に来たアルテミスのメンバーも食べて気に入り、その後何度も作る事を頼まれて追加注文した辛子明太子がすぐに底を尽くのはご愛嬌。
それから辛子明太子の発注量が増えたのは言うまでも無い事であった。
~本日の調理~
明太子のクリームスパゲティ
クリームソースを使った物に限らず、パスタは茹でた後もソースや汁気を吸い込むので、是非出来立てを食べてください。
作り置きする場合は、茹でたパスタとソースは別々にしておくと良いです。
そして、茹でたパスタには、サラダ油やバターを絡めておくとパスタ同士がくっ付く事を防ぐ事が出来ます。
今回は、クリームソースとして作りましたが、店やコンビニ等にある明太子のスパゲティも作るのは簡単です。
薄皮を取り除いた辛子明太子にマヨネーズと溶かしバター、レモン汁少々を混ぜ合わせた物を茹で立て熱々のパスタと混ぜ合わせると完成です。
この場合は、クリームソースと違い、水切りをせずにそのままトングで掴み入れた方が上手く出来ます。
ペペロンチーノ等と同じ様に茹で汁がソース代わりになるからです。
どちらも美味しいし作るのも簡単なので、好みでどうぞ~