05.ミートソース
本日も雨季による雨がシトシトと降り続ける中、おっちゃんは1人キッチンに立ち料理をする準備をしていた。
「さ~て、常備菜以外に保存していた物も少なくなってきたし、折角暇だから今日はちょっと手間が掛かる物を作っておくとしますかね~っと」
そんな独り言を呟きながら材料を揃えていく。
「この間、ギルドの賞味期限ギリギリ保存食放出セールでトマトのホール缶を大量に購入しといたし、雨の晴れ間に買っておいた野菜や肉もあるからミートソースを作るとするかな」
「ミートソースは、作って冷凍保存しときゃパスタ以外にも色々な料理に使えるから便利だし、ちょっと一手間加えるだけで別の料理にも使える万能ソースだから大量に作り置きしておいても損しないからな~」
「後は、普通に美味しいしなっ!」
長い間独り暮らしをしている所為か、ブツブツと無意識で独り言を言っている事に気付かずに喋り続けているおっちゃんの姿は傍から見たら中々不気味な姿であったが、それを指摘する様な他人も居ない為に結局治る事は無かった。
まぁ、そんな人が居たらとっくに独り暮らしから開放され、隣には恋人や奥さん、子供位は居るのだが。
「さ~て、じゃあ作るとしますか~」
準備を整え、しっかりと手を綺麗に洗ったおっちゃんが調理を始めた。
・ミートソース・
「さて、まずは野菜のみじん切りだな」
そう言いつつ、おっちゃんはタマネギやニンジン、ピーマンを用意しだした。
タマネギは上下を切り落としたら外側の皮を剥がして綺麗に洗い、ニンジンも皮を剥いて綺麗にし、ピーマンはヘタの部分を親指で内側に押してヘタと一緒に種を外して綺麗にしていく。
そして、それぞれをみじん切りにして種類毎に分けて置いていく。
「こういう作業は量が少ない時は別に包丁でやっても良いけど、大量に作る時は疲れるし時間が掛かるからやっぱりフードプロセッサーがあると便利だよな~」
「まぁ、やりすぎると細かくなりすぎて味が落ちるから適度にしとかないといけないけどな」
今回は大量に作って保存するつもりなのでフードプロセッサーを使って一気にそれぞれをみじん切りにしていくおっちゃん。
「おっと、忘れちゃいけない隠し味のシイタケちゃ~ん♪」
「これを入れると更にダシが出て美味しくなるんだよな~ シイタケ以外のキノコでも美味しいけど、やっぱりシイタケが一番な気がするな」
そんな事を言いつつシイタケの石突部分を切り落とした後、シイタケの傘の部分も軸の部分もみじん切りにしていく。
「よっし、これで野菜の準備は完了っと」
「使うひき肉は、やっぱり豚のひき肉だよな~ 鶏のひき肉だとあっさりしすぎるし、牛のひき肉は好きな人は好きらしいけど、何か味が豚よりは落ちる感じなんだよなぁ」
「それに、牛のひき肉は食感が豚のひき肉よりも硬い感じがするんだよなぁ。 長時間火を通すと牛肉は硬くなるし、ひき肉でもそれが出てるんだろうな~」
そう呟きつつ、大量の豚ひき肉を用意していく。
「調理する前の注意点としては、ひき肉に限らず肉は使う直前に冷蔵庫から出すんじゃなくて、使う前に常温になる様に事前に冷蔵庫から出しておく事が大事だよな~」
「冷えたままの肉を炒めたり焼いたりするとドリップ混じりの肉汁が出て不味くなるし、肉の臭みが出て味が落ちるもんなぁ」
「っと、ニンニクを用意するの忘れる所だった。 これを忘れると味が引き締まらないんだよな~」
ニンニクの上下を切り落としたら外側の皮を剥いて縦半分に切り、中心にある芽を取り除いたら包丁の腹で押しつぶした後にみじん切りにしていく。
「ニンニクの中心にある芽は残しておいても別に良いけど、残っていると食べた後の匂いが相当匂うからなぁ。 まぁ、これは好みだろな」
そうして全ての準備を整えたおっちゃんは大きな中華鍋をコンロに乗せた。
「さ~て、じゃあ一気に作っていきますか~!」
気合を入れたおっちゃんが調理を始めた。
「まずは油とみじん切りにしたニンニクを入れてから火に掛けて~っと」
「中華鍋を熱してから油を入れたりニンニクを入れたりすると、引火したりニンニクが焦げたりして怖いからなぁ」
油とみじん切りにしたニンニクを入れてから中華鍋に火を掛けて、ニンニクから香りが出るまで中火位で炒めていく。
「ニンニクの香りが出てきたら豚のひき肉投入~っと」
ニンニクの香りが出てきたら、常温に戻しておいた豚のひき肉を中華鍋に入れ、火を強火にして色が変わるまで一気に炒めていく。
「よっし、豚のひき肉の色が変わったし、次は野菜だな。 火が通りにくい順に入れていくか~」
準備しておいたみじん切りの野菜を、ニンジン、シイタケ、タマネギ、ピーマンの順に時間をずらしながら入れて炒めていく。
「ふんふんふ~ん♪ やっぱり、野菜を大量に入れると野菜自体から旨味が詰まった水分が出てきて水いらずで作れるから良いよな~」
焦げない様にジャカジャカとヘラを使ってかき混ぜながら炒め煮にしていく。
「まぁ、拘る人とかお洒落な人は、この時にローリエとかブーケガルニとか入れるんだろうなぁ。 まぁ、私は面倒だし味もそれ程変わらないから入れないけどなっ!」
「よ~し、全体に火が通ってきたしトマトのホール缶を加えるか~」
パカンと缶詰の蓋を開けてトマトのホール煮を中華鍋に入れていく。
「トマトのホール煮を潰しながら混ぜて~ 沸騰したら浮いてきたアクを掬い取って雑味や臭みを捨ててっと。 アクを取らないと本当に出来上がりが不味くなるからな~」
沸騰してクツクツと沸いている表面に浮いた泡や鍋縁に付いたアクや脂をお玉で掬い取って捨てていくおっちゃん。
「アクも取ったし、味を整えていくとするかな」
そう言いつつ、塩、コショウ、コンソメの素、トマトケチャップを少しずつ加えて味を整えていく。
「トマトケチャップは万能だよなぁ。 トマト以外にも色々な野菜を混ぜて作ってあるから旨味も追加されるし、トマトや野菜から出る甘味もプラスされて更に美味しくなるもんな~」
「後は、全体の味をまとめてくれるのも良いよな」
「まぁ、好みだけど他にもウスターソースとか加えても良いかもしれないなぁ。 こういうのは家のカレーってのと同じ様にそれぞれの好みがあるからな~」
パーティーでの野営や仲間が集まっての食事の時にそれぞれの拘りで料理中に喧嘩になった昔を思い出して遠い目になったおっちゃん。
「あの時はカレーだったか・・・隠し味にコーヒー入れるかチョコレート入れるかジャム入れるかで喧嘩になったんだよなぁ」
「ヒートアップして、それぞれが自分のやり方を押し通す為に高威力のスキルや魔法を使おうとして危なく依頼どころか命すら危なくなったのは最悪の思い出だよな」
そんな過激な出来事を思い出してブルッと背筋を振るわせたおっちゃんだが、気を取り直して調理を進めていく。
「さて、最後の仕上げ&コク出しのバター投入~っと」
「このバターが決めてなんだよな~ 入れるか入れないかで一気に味が変わるからなぁ」
バターをたっぷりと加えてから全体をよく混ぜ合わせ、最後の味見をして納得したおっちゃんは火を止めてゆっくりと冷ましていく。
「煮込み料理は、この冷ます事が本当に最後の最後で一番大事な事なんだよなぁ」
「冷める過程で具材に味が染み込むし、バラバラだったそれぞれの味が馴染んで全体が整ってまとまるからな~」
「出来立てよりも、一度冷ましてから温め直した方が本当に美味しいもんな」
「うっし、冷めるまで一服するか~」
そんな事を呟きながらリビングに行き、出来上がったミートソースが冷めるまで休憩がてら一服するおっちゃんであった。
そして、冷めて完成したミートソースを袋に小分けにして冷凍庫に保存していく。
「ふ~出来た出来た。 これで当分は困らないな」
「後は、その都度解凍して使えば良いしな~」
「普通にミートソーススパゲティとしても美味しいけど、ご飯と混ぜて炒めればチキンライス風になるし、オムレツで包めばオムライスだし、チーズを乗せて温めればドリア風で美味しいしな~」
「更にカレー粉を混ぜれば、甘めのキーマカレー風になって一気に味を変えられて飽きる事も無く食べれるしな」
「出来上がったし、今日の夕飯はミートソーススパゲティにして食べて終わりにするか~」
雨が降り続けジメジメとした気が滅入りそうな雨季だが、おっちゃんとしては充実した日を送りスッキリとした顔で一日を終わらせた。
独り身でも充実し満足な一日を送っているそんなおっちゃんの独身生活はまだまだ続きそうである。
おっちゃんに春が訪れるのは何時になるのか・・・それは神すらも分からないのであった。
~本日の調理~
ミートソース
(大部分を冷凍保存。 残りをミートソーススパゲティとして食す。)
今回のミートソースは材料次第で味が変わっていきます。
タマネギやニンジンの野菜多めで作ると甘めのミートソースになります。
豚ひき肉を多めにすると濃厚なポモドーロ風のガツンとした味わいのミートソースになります。
後は、好みですが鷹の爪(唐辛子)のみじん切り(種抜き)をニンニクのみじん切りと一緒に炒めると少しピリッとした辛さがあるミートソースが出来上がるので、それぞれ好みで自分流の味を目指しても良いかと思います。
今回、レシピと一緒に簡単に出来る応用方法も載せましたが、今回載せた応用方法以外にもそれぞれのアイデア次第で色々な応用が出来ると思います。
ミートソースは色々便利に使える万能ソースだと思うので、自分なりの応用を考えても楽しいかもしれません。
それでは、良い食生活を~