00.プロローグ
初投稿なうえに、料理レシピをメインにしようとする実験作です。
至らない事だらけでしょうが、生温かく見守ってください。
ガチャ、ギー、バタン。
少し軋んだ音を立てながら扉が開く。
「ふぅ~、ただいま~っとね」
少々疲れた声で一人の男がそう呟きながら入ってくる。
しかし、返事を返す相手は居ない。
何故なら男は一人暮らしで返事を返す相手など皆無なのだから。
ただ単に独り言を言っているだけなのである。
薄暗い静かな家の中を男は手馴れた動きで歩き、入ってすぐの比較的広い土間の様な場所に置いてあるテーブルセットの椅子にだらしなく座り一息ついた。
「あ~、今回は疲れた。もう昔みたいに動き回る仕事は遠慮したいね」
「てか今回みたいな仕事はもっと若い奴等に任せるもんじゃないのかねぇ」
「何だって私みたいな年いった人間に依頼するかね」
「ギルドマスターもギルドマスターだ。私に依頼するよりも、もっと若い連中に依頼出して若手を育成しろっての」
と、散々愚痴を言いながら備え付けのコップに冷えた水を入れて飲み干し、ゆっくりと荷物と身に着けている物を外していく。
それ等は、所々金属で補強された皮鎧であったり、つま先や踵が金属で補強されたブーツであったり、剣やナイフ等の刀剣であったりし、どれも使いこまれ独特の雰囲気を醸し出している。
しかも、それ等は素人が見ても特別な物であると感じる事が出来る一級品ばかりであった。
それ等を身に付けて行う仕事とは何なのであるのか。
その男の職業は、冒険者と言われる物であった。
過去には探索者、冒険者、荒くれ者、盗掘屋、何でも屋等、人や地域によっては様々な言われ方をする者達。
現在では冒険者ギルドという国の枠組みを超え、様々な物事等をまとめあげ依頼という形で解決し貢献する互助組織に登録した者達の名称。
冒険者ギルドに登録した者達は、平素の素行や受けた依頼の種類、依頼に対する達成率、戦闘能力やそれ以外の能力を鑑みて決められるランク制度によって管理されている。
ランクは、登録だけなら幼い子供でも登録出来るFランクから始まり、そのランク±1の依頼を規定数達成すると徐々にE,D,C,B,A,Sとランクが上がっていく。
ただし、Cランク以上になるには依頼達成数以外にもランクアップ試験を受け合格しなければならないが。
更にBランク以上となると、人格等も合皮に加味されてくるので一概には強い者が上にいけるという制度ではない。
故に高ランクの冒険者となると誰からも一目置かれる様な存在となるのであった。
まぁ、中には高ランクであってもまったく気にされない様な者も居るが。
・・・この男の様に。
男を端的に表すならば。
年齢は40歳間際なのに未だ独身。
身長は170cmギリギリあるか無いかの小柄な体格。
体型は、とりあえず中肉中背でそれなりに鍛えられた体型をしているが、最近は腹周りが気になってきている。
髪の毛は、まぁ薄くはなっていないが生え際は年齢相当に後退してきている。
何処からどう見ても「ちょっと体格の良い普通のおっさん」な見た目なのだ。
冒険者ギルドや街中でも名前で呼ばれず「おっちゃん」だけで通じる程だ。
しかし、侮るなかれ。
この男は、冒険者ギルドでのランクは上から数えて2番目のAランク。
しかも、武器の扱いが一流でありながら高レベルの魔法まで扱う事が出来る魔法戦士と呼ばれる攻守共にバランスが良く、距離を選ばずに戦う事が出来る非常に強力な能力を誇る者なのだ。
普通ならば、街中であれば貴族や街の領主並みの待遇をされ、冒険者ギルドに登録した冒険者からは尊敬の眼差しを受け憧れる様な存在なのである。
正装をしてギルドカードを提示すれば王宮にすら入る事が出来る程の人物なのである。
それなのに誰一人として普段はその事実に気付かない。
誰もが「おっちゃん」と呼び気軽に付き合っているのである。
男自身も変に気遣われるよりもそちらの方が気楽なのでまったく気にしない。
そんな「おっちゃん」がこだわっている数少ない物に今居る家がある。
普通は石やレンガを組んで作られる中世ヨーロッパ風の靴を脱がない土足で入り寝る時のみ靴を脱ぐ家であるが、その男の家は土足厳禁である。
わざわざ玄関部分に土間を作り、そこにテーブルセットやソファ等を置き靴を脱いでから家の中に入る様にしてある。
更に土間より先は一段高くなっており、床や壁には木材を張ってあり外観は普通の家でありながら中に入ると暖かい内装となっている。
リビングには絨毯が敷かれ、ローテーブルにローソファ等が設置されており、まるで現在のモダンな家屋みたいな雰囲気なのである。
特に風呂には多大な労力が割かれ、体格の良い男達が余裕で5人入っても大丈夫な広い浴槽と洗い場が設置されており、更には魔法を用いて温泉を掘り当て源泉かけ流しを実現している。
そして、同じ様にキッチンにも力を入れており、高価な魔導具を用いて現代のキッチン並みの設備が整えられている。
「おっちゃん」は、美味しい食と快適な住環境、疲れを癒しリフレッシュしてくれる風呂に関しては絶対に譲れない物があるのだ!
その信念を元に作り上げたのが今居る住居なのである!
見た目や規模は他よりもちょっと良い位の10人が住める位の庭付き2階建ての家屋。
しかし、実体は高価な魔導具がふんだんに使用された下手な砦よりも堅牢な防衛措置が取られ、本人の許可が無ければ竜種ですら許された範囲以外の敷地内に立ち入る事が出来ない程強力な結界が敷かれている。
更に、家屋自体も高級な建材をふんだんに使用されて作られており、王侯貴族の巨大な邸宅すら余裕で建てる事が可能な程の費用が掛かっているのである。
この事実を知ったら誰もが呆然とするか、家に入る事を躊躇してしまう様な家屋なのであった。
この様な他人にしたら理解出来ない様な事にこだわりを持つが故に今も独身であるのだろうと思われる「おっちゃん」なのであった。
しかし、そんな「おっちゃん」も今日は疲れ果てていた。
故に作り置きしておいた常備采で手早く食事を済まし、風呂に入って汗を流したら、自室のベットに飛び込みさっさと寝たのである。
これは「おっちゃん」の普段の日常を綴る物語。
冒険をするでも無く、危険な事件を解決するでも無く、姫とのロマンスも無いただただ日常を過ごすだけの物語。
他と少し違う所は・・・「おっちゃん」の食事に関して綴っているだけなのであった。
~本日の食事~
作り置きした常備采(内容不明)
今回は、世界観や本編の説明回みたいな物です。
次から料理レシピを載せていこうかと思っています。