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1話 ぼっちな俺の、変わらない二年目

 あけましておめでとうございます。紅白歌合戦の直後に書きました

 行き当たりばったり、一時の思いつきで書いているので、よく分からない表現やいきなり話しが飛んだりなどすると思いますがご了承下さい。

 パリッと糊のついた詰め襟の制服を着ると、かなり憂鬱な気分になった。


 今日から新学期…いや、正確には「新学年」だ。


 高校生活の三分の一が終わった、と思えば喜べるのかもしれないが、あと二年間も今までと同じことをしなければならないかと思うと、やはり憂鬱な気分になるのだ。


 姿見で身だしなみをととえていると、やたらどんよりした表情の俺と目が合った。


  並みよりは整っているが、女子にキャーキャー言われる程でもない。そんな顔立ち。だが今はその憂鬱な雰囲気によりげっそりとして見える。

  二週間という長きに渡りむさぼっていた怠惰な生活は今日で終わり。新しい「Ⅱ」と刻まれた学年章を右の襟に付け、反対には我が母校、県立南ヶ丘高校の校章を付けて、完全なる「高校生」に変身する。


 着替えの終わった俺は、夜勤明けで寝ている母さんをスルーして、家の一室に向かう。


 そこにあるのは、一つの仏壇だ。


 とてつもなく豪華なこの仏壇に奉られている霊は、たった二人。


 俺の父親と姉だ。

 俺はロウソクに火を付けて、その火に線香を近づける。それを立てて、チーンと鳴らし、合掌。天国にいても地獄にいてもおかしくないような二人に、今日の報告をする。


 親父、姉貴、また地獄の高校生活が始まっちまったよ。

 俺は今日も元気だが、ぼっちだ。こんなこと二人が生きてるうちに言ったら、姉貴は心配するだろうな。

 親父は「ざまぁ(笑)」とか言っておちょくってくるんだろうが。


 まぁそんなわけで、今日から花の高二だ。


 せいぜい無彩色の青春を、謳歌してみせるさ…


 んじゃ、行ってきます。


 いつものように挨拶を済ませ、ロウソクを消して部屋に戻る。

 春休み課題と筆記用具の入った学校指定の鞄をつかみ、肩に掛ける。


 玄関に向かい、ここしばらく履いていなかった靴を履き、少し緩かった靴ひもを結びなおして外に向かう。


 玄関を開けると、まだ少し冷たい風が吹き込んできて少し身震いしたが、一歩外に出ると黒い制服は4月の太陽の光を吸収し、充分に暖かくしてくれた。むしろ暑いまである。


 玄関の横に置いてあるチャリを出し、カギを外してサドルに跨がる。


  ペダルを力いっぱい踏み込み、俺は高校二年生への道のりを進み始めた。



 ☆ ☆ ☆



 県立南ヶ丘高校。


 どこの都道府県の、どこの市町村にでもあるような、ただの普通科高校だ。


 能力者が集まる学園都市だったり、テストの点数に応じた能力の召還獣で戦争したり、青春時代に報われないまま死んだ人間が集まってたり、そんなことは絶対に無い、普通の高校。


 勉強できる奴もスポーツ万能な奴もモテててリア充な奴も、頭の悪い奴も運動音痴な奴も全然モテない奴も、そしてもちろんぼっちもいる、普通の高校。


 アニメの主人公なんかだと、「平穏は退屈だ。俺は非日常を望んでいる」みたいなことをほざきはじめて、物語に巻き込まれていきそうな高校だが、俺の人生の主人公たる俺は平穏を望んでいるので、おそらく何事も起こらないままだろう

 何も起こらないなら、何も変わらないということ。

 そもそも変化というものは、変わる必要があるから変わるものなのだ。


 これまで変わらずにやってきていて、明日からも何も起きないのであれば、変わる必要はない。


 だから俺はぼっちのままで良いのだ。


 そんなことを考えつつ、俺は学校に着いた。行き帰りの間毎日こんなことを考えている訳ではないが、一緒に学校に行く友達など居ない俺にとって、登下校中はとっても暇なのだ。だから、下らないことを考えて暇を潰している。

 校門から中に入ると、部活生の声が聞こえてきた。まるで校門の中と外は世界が違うと言わんばかりだ。


 いや、実際世界が違うのだろう。高校という青春時代真っ只中の彼ら彼女らにとって、学校とは特別な場所なのだ。


 努力するだけで褒められ、讃えられる、学校とはそういう場所だ。もちろん結果も重要だが、そのためにしてきた努力も、ちゃんと見てもらえる。


 社会に一歩踏み出せば、いくら努力をしていても結果を出せななければそれは無意味、無価値なものと化す。…いや、結果を出していようとも、上に立つ人間の目にとまらなければ無意味になることさえあるのだ。

 そんな世界は、青春に似合わない。未来ある青春時代の若者のやる気をわざわざ奪うような環境は、あってはならない。


 だから、隔離する。社会の闇に染まり、努力を諦める人間を減らすために。


 そんなことも知らずに、分からずに、朝練にせっせこ取り組む部活生を、しかし俺は心から尊敬する。


 なぜなら彼ら彼女らは、未だ希望をもっているからだ。部活生に限らず、勉学に励む生徒、家で趣味に傾倒する生徒、放課後や休日に友達とめいっぱい遊ぶ生徒、これらの生徒は皆、希望を持っている。


 そしてそれは、俺が三年前無くしたものだった。


 そこまで考えて、思わず「フッ」という自虐的な笑みが漏れた。


 たかだか部活生の声一つで、こんな馬鹿みたいな思考をしてしまう。まったく一年前と変わっていない。


 何より救えないのは、俺が変わろうとしていないことだ。いやいやまったく、ほんの少し、これっぽっちも、変わろうなんて考えが浮かばない。


 俺はやはり、壊れているのだろうか。三年前のあの時、俺は壊されて、もしくは自ら壊れてしまったのだろうか。


 いくら考えても答えは出ない。俺には出せない。


 ふと気が付くと、駐輪場まで来ていた。考え事をしていてもたどり着けるほど、この駐輪場に何度も来ていただろうか。


 ここに自転車を停めるのも今日が最後。明日からは新しい学年、新しいクラスの駐輪場に停めることになる。



 こうして俺の、輝かしくない高校生活の二年目が始まったのだった。




 社会の事とか、現役高校生な自分が書いても説得力無いですねw


 

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