第五話 研究者達
次の日、峰市が懸念していた[分子規模でカスデヒオを操作すると、カスデヒオの効果が無くなるのではないか]という疑問は意外にもあっさりと解決した。
先ほど使った電子顕微鏡のような物、つまり[顕微操作機]を使って、分子サイズのカスデヒオに水分子を吸収させようとしたところ、普段のカスデヒオと同じように吸収し、同じように放出したのだった。
昨日の実験の事を書いたノートに、今回の実験結果を書き足したところで、研究者達が来ていたのに気付いた。
「何かあったんですか?」
「ああ、昨日のメタンハイドレートの実験の事でね。」
「そういえばカスデヒオの効果、不思議でしたね。」
「そう、それが気になって実験していたんだ。」
そう言って見せたノートに、中村宗一達研究者は驚いた。
「凄い!この実験を僕達が来る前に終わらせていたなんて!」
そう。この峰市は史上稀にみる
[考えるより実験]
という、科学者としては珍しいほど、思い付いたらすぐさま行動に移すことを最優先に考えた科学者なのだ。
確かに、[考えるより実験]な研究者はいないわけではないが、この峰市に行動力で勝る研究者はいないだろう。
メタンハイドレートの調査にしろ、今回の実験にしろ、[普通]の研究者はもう少し考え、計算し、それで納得してから実験に移るのだが、やはり、と言って良いのか峰市は自覚していない。
しかし、峰市はバカなのではない。むしろ頭は良い方だ。
ただ、バカっぽく見える[顔]なだけである。
峰市の顔のイメージは、少し鼻が大きく、目が離れていて、だいたい口を開けている、って感じです。
ブサではなく、中性的な顔立ちです。