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橋をわたると記憶が消える世界

作者: 人喰
掲載日:2026/07/01

ふと思い立って短編を書いてみました。拙い文章ですが読んで頂けると幸いです。

 人の声と足音が川の流れる音を掻き消す日本橋の欄干に、一人の窶れた男がもたれかかっていた。

 長谷部聡(はせべさとし)は、大手企業に20年務め、昨年ついに次長に選ばれたエリートだ。


 だが、貧相なそのコートや薄ら混じる白髪、窶れた顔に整えられていない髭、そしてその濁った瞳は、そんなエリートとは思えぬ様相を呈していた。


 彼の虚ろな瞳は、透き通った冬の快晴を眺める訳でも、陽の光を反射する川面を眺める訳でも、ぎらぎらと煌めくビル群を眺める訳でも、寒そうに手を繋ぐカップルを眺める訳でもない。


 何も見ていなかった。虚ろな瞳で、無を見ていた。


「あ!お疲れ様っす、長谷部さん!」


 その男に、丸の内側からやってきた若い男がさわやかに声をかけた。

 細身でコートを着た、ベリーショートのその男は、入社五年目の聡の後輩、水瀬晴(みなせはる)だ。入社当初に教育係として晴を養成した聡は、教育係の任を終えた今でも彼と仲良くしていた。

 少し天然で所々抜けているところがあるため、一緒にいると、疲れる代わりに楽しい時間を過ごせる。だから、こうしてプライベートで会う程仲良くしているのだ。


 彼の声に反応し、聡は「あぁ」と小さく声を零し、髭面を向ける。欄干から手を離し、自らの脚で自身の身体を支えた。


「お待たせしました、行きましょ!」

「……あぁ」


 晴に促され、聡は重い足を持ち上げた。そして、力強く動き出した。


 橋を渡るために。その対価として、記憶を捧げることを厭わずに。




 橋を渡ると、記憶が一つ失われる。何の例外もなく、確実に。今こうして何の気兼ねも無く日本橋を渡る人々の記憶もまた、一つ失われているはずだ。友達と共に登校する学生も、夜勤明けで窶れた会社員も。


 この非現実的な内容が公表された時、世界は大きく揺らいだ。信じられない、そんな訳ないと、疑惑と混乱に満ちた叫び声が溢れた。

 しかし、それは事実だった。世界の端から端まで全ての橋で、その現象は成立していた。


 1998年にとある科学者が発見したその現象は、『エクウィノクス現象』と命名された。川でも池でも、橋を通って彼岸に渡った時、その生物は、自身の記憶のうちの一つを失ってしまう。人も、人以外も、だ。失われた記憶は二度と復元されることは無く、思い出すことは不可能である。


 当時既に社会人だった聡も、その時は大きな衝撃を受けた。きっと、誰よりも大きな衝撃を。


 この現象が、一体いつから起こっているのか、何故起こっているのか、予防は、事後処置は……解明しなければならない謎は未だ多く、その非現実的なリアルを受け止めきれない研究者は数知れない。分かっていることは、平安時代の文献には既にそれらしき記述があった、ということだけだ。


 そんな昔から『エクウィノクス現象』が存在していたが、数十年前まで誰も気づけなかった理由がある。

 それは、記憶を失ったことすら気づけないからだ。


 記憶喪失のように大量の記憶が抜け落ちる訳でもなく、何かを忘れてしまって思い出せない時の、喉に小骨が引っかかったようなもどかしさがある訳でもなく。ただ、記憶が一つ静かに息を引き取るだけ。だから、誰一人として『記憶を殺された』ことに気づけなかった。


 橋を渡る行為によって、自身の記憶の抹殺が成されてしまうことが分かって以来、人々は各地の橋を撤去しようとした。しかし、橋を落とすことは即ち交通インフラの破壊に繋がるため、多大なる混乱が生じることが危惧された。


 各国首脳が会談を重ね、出した結論は、『エクウィノクス現象』を放置する、というものだった。記憶が一つ消える程度で何か変わる訳でもない。そう判断された。

 実際、消える記憶は大小様々であり、小さいものであれば、「今朝通勤時に鳥を見た」程度の記憶が失われる時もあった。人が一日で吸収する記憶は無数に存在するため、その中の一つがひっそり消えても特段生活に影響は出なかった。


 だから、日本橋を渡る人々も何も気にしてはいない。何かを失った、そんな意識すら無いままに、橋を渡っている。


 そうして、いつしか諦められていった。交通の麻痺によるトラブルや、強硬手段を取ったことによる反発に比べれば、大したことない問題だ、と。


 民衆も、大多数はそれを理解した。反発の声も少数ながら上がったが、時の流れと共に徐々に減っていった。その生活に慣れてしまったから。


 今日も、多くの人が橋を渡る。平然とした顔つきで、当然のような足取りで。




 当然、聡と晴もだ。普通に、ただ歩く。歩いて、渡る。


「長谷部さん、聞いてくださいよ〜。昨日うちの課長が……」


 晴は、歩きながら聡に話しかける。聡は、「あぁ、そうだな」と雑に返す。その瞳は、やはり虚ろでどこも見ていなかった。一応歩く方向は向いているが、前を見ている訳では無い。焦点が合っていないズレた視界で、無を見ている。

 相変わらず呆然としている。しかしそれは、彼の無気力がもたらすものではなかった。よく観察すればそれは明白だ。


 その足取りは、一歩進む度に重くなっている。肩も力んでおり、呼吸も静かに早くなっている。額を這う冷や汗は、誰の目にも留まらず静かに広がる。鼓動もドクンドクンと早く強くなり、徐々に無視できない程に苦しみを連れてくる。


 聡は、恐れを抱いていた。橋を渡ることに。記憶が失われることに。


 落ち着け、落ち着けと、聡は心の中で唱える。それになんの効果も無いことを承知の上で。

 無を装った道化の腹の中は、乱れ散らかしていた。


 しかし、そんな聡の様子を、特段深く観察している訳でもない晴は───否、その他の人間も───聡の抱える真の感情に気づいてはいない。晴にとっては、ただ自身の言を無視に近い形で流されたようにしか映っていない。

 そんな晴は、怒るでも拗ねるでもなく、ただ不思議そうに無気力そうな聡を見つめた。そして、ふと零した。


「……長谷部さんて、たまーに死んでますよね」

「あぁ……あぁ?いや、そんなことはないが?」


 聡は、さっきまでと同じように適当に頷こうとした。が、その突拍子もない発言に驚いて真面目な反応を見せた。


「いや、ずっと気になってたんすよね。一緒にいる時、たまに何も考えずに返事してたり、上の空な時があったり。仕事の時とかはしっかりしてるのに、二人でいる時たまにこうなるから、疲れて死んでるんじゃないかなーって」

「別に死んじゃいねぇよ。でもま、疲れてんのは事実か」


 今朝鏡で見た目元の隈を擦りながら、ため息混じりにそう言う。


「また残業してたんすか?」

「まぁな」

「……今月何度目っすか?」

「6か?いや、7かもな」

「今日まだ8日なんすけど?いっつも残業してますよね?残業しないと死ぬ体質なんですか?」

「まぁ残業しないと安心しねぇってのはある。自分が社会の役に立ててるって感じするし。つか、正味残業ってタバコより中毒性高ぇから。俺はタバコの代わりに残業キメてんの。最高だぜ、残業は」


 聡の悪びれのない様子を見て、晴は少しムッとした。


「はぁ〜、さっすが、次長さんは大変っすね〜。いや、次期部長さんって言った方がいいっすかね?」


 晴は、聡が自身の役職についてあまり誇らしく思ってない点をよく知っていた。そのため、ちゃっかりそこをつついた。聡は、動じる様子はなく「揶揄ってくんな、若造」と頭をこついた。


 ……それと同時に、二人は橋と地面の境界を超えた。聡の呼吸が、ほんのり乱れる。

 しかし、間髪入れずに晴が大袈裟にリアクションをした。


「あ〜!小突きましたね、長谷部さん!しかも橋渡った瞬間に!あーあ、今ので僕の記憶3つくらい消えましたよ!」

「な訳ないだろ。つか、認識出来ねぇっつの」


 その冗談に、聡は的確にツッコミを入れた。晴は「へへ」と小さく笑った。


「ちょっと元気出ましたかね?僕のおかげで」


 ニカッと明るい笑顔を見せる晴に、聡は一瞬ぽかんと口と目を開けて驚いたような表情を見せた。それをすぐに隠すように、はぁとため息をついた。


「ったく……お前みたいなガキンチョは俺みたいな大人の機嫌取ってねぇで、自分のことだけ考えてりゃいいんだよ」


 呆れたようにぽんぽんと頭の上から手を置きながら、明るく言った。自身の動揺と感謝を隠すように。


「まぁいい。そんな背伸びしたガキンチョに、今日は俺がなんか奢ってやる」

「え、まじすか!?俺肉食いたいっす!」

「しゃーねー、五万までな」

「金持ちめ……それ、実質上限無しっすからね。までも、ありがたくゴチんなります!」


 ころころと表情を変える晴を見て、ふっと笑いながら、晴と共に街を歩いた。


──────────────────


「いや〜、ご馳走様でした!美味かったっす!」

「ははっ、そりゃよかった」

「っぱ人の金で食う肉は最高っすね!」

「それ、奢った本人の前で言うか?」


 けたけたと笑う晴と共に、東京駅へと向かう。


 十時から二十時まで、男二人で東京の街を楽しみ尽くした。最後に食べた焼肉は格段に美味しかった。

 そうして、疲労を抱えた身体を脚で支え、ここまで歩いてきた。この、日本橋の前まで。


「……騒がしいな」


 ぽつり、零す。


 東京という街は、夜になっても相変わらず煌びやかで騒がしい。人の声と足音で、川の流れる音は掻き消されてしまう。

 いつだってそうだ。この日本橋の上を渡る時、聡の脳内は人の音で満たされる。そして、その喧騒に呑まれ……静かに、消えてしまう。


「はぁ〜、明日は仕事っすよ。ほんと嫌んやっちゃいますね」


 だらんと両腕を落とし、晴はそう言った。呑気に、いつも通りのテンションで。


 普通。その二文字でしか表せない日常を、この橋の上で保ったままに歩く。晴は───否、他の人々も、だ。


 ただ一人、聡を除いて。


 聡の歩は、橋を渡る時だけは相変わらず重かった。無気力の道化が再び姿を現し、内に潜めるべき恐怖を押し込めていた。


「……長谷部さん、また死んでるっすね。大丈夫っすか?」


 晴が、聡の顔を覗き込みながら聞いてきた。その表情は、少し心配そうだった。


「なんの問題もねぇよ。言ったろ、ガキンチョが大人の心配すんなって」

「でも〜」

「うるせー。とっとと帰んぞ」


 晴を心配させまいと、普通を装って歩き出す。晴も「むぅ〜」と不機嫌そうに頬を膨らませながらついてくる。


 橋の中腹まで差し掛かった時、不意に聡の足が止まった。


「……長谷部さん?」

「や、すまねぇ。立ち眩みが」


 目尻を押さえ、少し俯きながらそう言う。しかし、それは事実では無い。

 視界は良好、体調も万全。でも、足が前に進まないのだ。瞬間接着剤を踏んだのかと錯覚しそうになるほど、足が地面に張り付いて動かない。


「あの、長谷部さん?本当に大丈夫なんすか?体調悪いなら、救急車呼んだ方が」

「るせー、大丈夫だっつってんだろ……」


 僅かに震える声で言う。言いながら、大丈夫な訳無い声してるな、と自分で分かってしまい、少し恥ずかしくなる。


 何故このような状態になっているのか。原因は、はじめから分かりきっていた。それでいて尚、逃げ続けてきたことも。


 ふぅ、と一息つく。そして、天を仰ぐ。

 仰いだ口から、ぽろぽろと零れてきた。橋を渡れない男の本音が。


「……お前はよ、怖くはねぇのか?」

「はい?」

「橋、渡んの。怖くねぇの?」

「え、えっと……?」


 突拍子もない質問に、晴が狼狽える。そりゃそうなるか、と聡は苦笑する。

 そして、話し始める。


「俺は、橋を渡ることを───もっと言えば、記憶を失うことを恐れてる。この世界の大半の人々が『当たり前』としているその行為を、『当たり前』と受け入れられねぇんだ」

「はぁ」


 晴は、聡の言を聞いて「何言ってんだこの人」と言わんばかりの視線を送ってきた。


「考えてもみろ。記憶が一個消えるんだぜ?橋を渡っただけで。科学的には証明出来ねぇし、幻想(ファンタジー)の設定にしても気が狂ってるとしか思えねぇ。しょうもねぇ、どうしようもねぇカスみてぇな事象、なんで当然みたいに受け入れられんだよ?」

「うーん、それは……物心ついた頃からそう習ってますからねぇ」

「お前みてぇなガキンチョにとっては、数字が一からで、英語がAからで、日本語があから始まるのと同じ常識かもしれねぇ。でもな、俺は人生の半分近く、そんな事象知らんで生きてきたんだ。だのに、そんなもん急に言われたって受け入れらんねぇんだよ」


 少しずつ、聡の腹の中の怒りが火力を上げ始める。理不尽を嘆く心が、ふつふつと怒りに変貌していく。


「そう、そうだよ。なんて受け入れられてんだ?アイツも、アイツも、アイツもアイツもアイツもアイツもアイツもアイツもアイツもアイツも!!気持ち悪ぃんだよ、お前ら……!」


 道行く人々を指さし、思わず大声で叫んでしまいそうになる。必死にそれを抑えつつ、尚晴に訴える。


「ずっと我慢してきた。お前らが当然として受け入れるから、俺も何も言えなかった。無視する他無かったんだ。でも、限界なんだよ……このまま橋を渡るのが、俺の大事な記憶が消えていくのを我慢すんのが!!」


 割と言葉遣いの荒い聡だが、今はいつも以上に荒々しい言葉が次から次へと溢れ出てくる。激情に呑まれるままに、晴に想いを叩きつける。


「でっ、でも!一個記憶が消えたって大した問題も無いし、橋渡んなきゃ生活出来ないし、仕方ないじゃないですか!」


 晴も、必死に抵抗しようとした。別に戦っている訳でも無いが、ここで引いてはならない気がしたから。


 そんな反論を聞いて、聡は怖い程静かで滑らかに言葉を紡いだ。


「『エクウィノクス現象』の存在が正式に公表されたのは、1998年。俺が24の時だ。でもな、俺はこの現象の存在を公表時点で既に知ってたんだよ」

「え……?」

「……俺は、存在を公表されるより前に『エクウィノクス現象』による記憶障害を経験した人間だ」


 冷たい声が、晴の背筋を撫でた。




 思い出す、過去の記憶。


 20歳、成人式の日。同窓会を終え、一人の女性と歩いていた時のことだった。

 この日本橋を渡りきった瞬間、聡は隣の女性に関する記憶を失った。ゼロから百まで、一つ残らず全て。


 それまで談笑していたらしいのに、橋を渡りきった聡の記憶には、そんな描写は存在しなかった。その人物の名前さえ分からなかった。


 最初、聡は、知らない女が自身に親しげに話しかけてくるのを見て、困惑してしまった。困惑のままに、彼女の話を止め、お前、誰だ?そう聞いた。

 彼女も、困惑した。困惑して、固まってしまった。だから、もう一度聞いた。お前は誰なんだ、と。


『最っ低!なんで私、こんな奴と……っ!!』


 直後、強烈なビンタが彼の頬を貫いた。そして、彼女は走り去ってしまった。

 わけも分からぬままに取り残された聡は、苛立ちを覚えた。知らない女に突然ビンタされたのだから、当然といえば当然だ。


 だが、家に帰って冷静になってから、どうしても彼女のことが気になった。そこで、知っている人がいたらいいな、とダメ元で他の友人に聞いたり、自身のスマホフォルダを漁ったりして、彼女のことを調べようとした。

 結果、簡単に彼女のことは分かった。


 彼女は、文字通りの『彼女』だったらしい。


 小学校から大学まで、ずっと一緒の幼馴染。高校卒業と共に付き合い始め、結婚まで視野に入れていたらしい。同級生達には「おしどり夫婦」なんて呼ばれ、色んな場所でデートをして、その都度仲睦まじい写真を撮っていたらしい。


 だが、そんな記憶は何処にも存在しない。写真に記録されているのに、彼の脳はそれを見ても何の情も抱けない。


 怖い。気持ち悪い。何なんだ、コイツは。知らない。知らない人だ。見たこともない女だ。


 誰の記憶にも残り、あらゆる媒体の記録にも残っている。なのに、自分だけが知らない。覚えていない。その感覚は、果てなき沼の中に沈むような感覚だった。


 幾つもの病院を転々とし、原因を探した。でも、何も分からなかった。

 だから、二年後に『エクウィノクス現象』の存在が公表された時、彼は誰よりも衝撃を受けた。


 こいつのせいだ、と。




「どの記憶が、どこからどこまで消えるのか。それが定まってないクソ仕様のせいで、お前らの危機感は欠如してる。本当に大切な記憶を失くしたことが無いからな。でも俺は知ってる、知ってんだよ。俺だけが何も知らない、その恐怖をな」


 額と眉間に皺を寄せ、両手を握り締め、全身に力を入れて、怒りを顕にする。


「俺は橋が嫌いだ。それに、お前らも嫌いだ。ついでに俺も嫌いだ。お前に何言ったって解決しないのは知ってんだ。これが八つ当たり以外の何者でもないこともな。知ってて尚、お前に当たることでこの溜飲を下げようとする自分が大嫌いだよ」

「………………………」


 一定の怒りが過ぎ去り、次に矛先が向いたのは聡自身だった。何の気なしに見つめた己の姿の醜さと、怯えたように聡を見つめる晴の瞳が彼の心臓を穿った。もう、怒りはどこにも無かった。


「……あぁ、ほんっと最低だな、俺」


 小さくぽつりと零したのを最後に、聡はピクリとも動かなくなった。晴も、何も言わなかった。ただ、二人の男が、夜の日本橋で立ち尽くした。


「……帰りましょう」


 数分の沈黙の後、晴がそう言った。

 辛うじて絞り出した言葉だった。なんの悪気も無く言った自分の言葉が聡を傷つけたこと、聡が隠し通してきた恐怖に気づけなかったこと。そして、橋を渡ることへの恐怖がじわじわ強くなっていくことへの恐怖。

 その全てを我慢して絞り出した、強い言葉だった。


「………そうだな」


 聡も、それを是とした。その言葉の強さを理解したから。そして、自身の弱さも理解したから。


 二人は、橋を渡った。静かに東京駅に向かう二つの背は、どちらも冬のビル風に刺されて凍えていた。


「……明日は、ちゃんと残業しねぇとな」


 駅のホームでぽつりと、聡は呟いた。

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