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追い剥ぎ聖女は強奪スローライフを満喫する  作者: ロゼ


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6

 こうしてお尋ね者となったモアだったが、この時点では「追い剥ぎ聖女」というあだ名はついていなかった。


 そのあだ名がついたのは、トッティーに匿われてスラム街の片隅で暮らし始めてからだった。


 コーネルは自国に戻るまでモアの元を何度も訪れ、モアの負担にならない範囲で様々な実験を行った。


 モアも自分にはどんな力があるのかを知りたかったため、喜んで協力していた。


 その結果、モアは規格外の聖魔法が使えることがわかり、自分の予想を遥かに超える力に、コーネルは何度も自分の国に来てくれと頼むこととなったのだが、モアは頑として首を縦には振らなかった。


 モアにどれ程の力があったのかだが、それは本人も驚くものだった。


「えっ?! えぇぇ?!」


 治ればいいなー、少しでも痛くなくなるといいなー、と思いながら、本人は浄化と同じ要領でかけた聖魔法は、片足をなくした少年の欠損した部分に強く集まり、光が消える頃には元通りに足が生えていた。


「僕の国の初代聖女が指を生やしたって

文献を見たことがあるけど、君は足まで生やしてしまうんだね! 凄すぎるよ!」


 コーネルは興奮を隠すことなく、目を輝かせており、その傍らでピナが「奇跡を見ました……」と腰を抜かしていた。


 どんな病気も怪我も治せてしまうが、寿命だけはどうしようもないこともわかった。


「やっぱり人の寿命まではどうにもできないのか……いや、君、本当になに? 規格外過ぎて笑っちゃうよ」


 コーネルが国に帰る際、モアに通信機だという魔道具の指輪と、一枚の紙を手渡した。


「君が持っていれば、この国を出てもなんとかなると思うんだ」


 その言葉通り、コーネルが国を出ても魔道具は正常に働き、コーネルとモアは日によっては何度も通信機で話をするようになっていた。


 そして、渡された紙は魔法陣の描かれた移動装置で、不思議なことに折り畳んでも開くとどこにも折れ線や傷一つなく、時折その紙を使ってコーネルがモアを訪ねてくるようになっていた。


 モアはというと、自分の力をきちんと把握したことで、元々の人の良さも発揮され、町外れの小屋で治療院を営み始めた。


 頭からすっぽりと白いベールを被り、安い治療代で人々を治すその姿に、皆が口々に「聖女様」と呼ぶようになり、次第に兵士達もそこを訪れるようになった。


 その一方で、モアは通りすがりに出会った人の中で、呪物を身につけている者を見かけると、最初こそは交渉していたものの、呪物に魅了された者が素直に渡すことはないため、それを強奪するようになっていた。


 そのため「追い剥ぎだ!」と騒がれる結果となったのだが、浄化した物はピナやスラム街の子供達の手で持ち主の元へと戻され、呪物から解放されて正気に戻った人々は感謝のしるしとして食料やお金を渡してくるため、モアの元にはたくさんの品が揃うようになり、それらはスラム街の人々の手に渡っていき、スラム街の状況も少しずつ変わり始めた。


 そしていつの頃からかモアは「追い剥ぎ聖女」と呼ばれるようになっていた。


「追い剥ぎ聖女だ! 追い剥ぎ聖女が出たぞ!」


「ヤバい! もう見つかっちゃった!」


「本当になにをしてるんですか、モア様!」


 パタパタと走り去る二人の背中を町の人達が優しい目で見ていることなどモアとピナは知らない。


「また追い剥ぎしてきたの?」


 隠れ家であるスラム街へ戻ると、魔法陣の描かれた紙が淡い紫色に光り、コーネルが姿を現した。


「いつも言ってるけど、来る時は一言ちょうだいよ! 着替えでもしていたらどうするのよ!」


「ふふ、ごめんごめん」


 コーネルとモアのやり取りを、ピナが微笑ましそうに見ている。


「早くくっついてしまえばいいのに」


「そうだよね、僕もそう思うよ」


「な、なに言ってるの?!」


 コーネルがモアに行為を抱いていることはモア以外の誰もが知っていることだったが、モアだけは自分の気持ちにもコーネルの気持ちにも気づいていないため、ピナは少しだけヤキモキとしていた。


「浄化するんでしょ? 早くやっちゃえば?」


 今日モアが奪ってきたのは小さなバッグだった。


 元々は空間魔法を応用して作られた収納バッグだったものが、長い年月をかけて呪物化した物で、もう収納バッグとしての機能も果たしてはいなかった。


「いつ見ても美しい光景だね」


 ほのかに光るモアの姿を見て、コーネルが嬉しそうに目を細めている。


 バッグの浄化は二分ほどで終わり、そのバッグはお小遣い稼ぎをしている子供達の元へと運ばれ、そこから元の持ち主のところへと戻っていった。


「モア姉ちゃん、今日はこれもらったよ!」


 帰ってきた子供の手にはカゴいっぱいのリンゴがあった。


「うーん、みんなでわけるには足りないね」


「じゃあ、私がリンゴと紅茶のパウンドケーキでも作りますよ」


「わーい! ピナ姉ちゃんのケーキ、美味しいから大好き!」


「そう? じゃ、手伝ってくれる?」


「手伝う!」


「あたしもー!」


 そういうとピナは子供達と家の奥にあるキッチンへと消えていき、部屋にはモアとコーネルの二人だけが残った。

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