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追い剥ぎ聖女は強奪スローライフを満喫する  作者: ロゼ


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「あれはマズイわ」


 食事会が終わって地下室へと戻ったモアがそう呟いたのをピナは聞き逃さなかった。


「どうしたんですか? なにかされましたか?」


「王妃様がね、呪物を身につけていたのよ」


「王妃様がですか?!」


 モアはピナに自分が見たことを話した。


「心臓のあたりからどす黒いモヤがハッキリ出ていたから、あのまま身につけていたら、あと二ヶ月くらいで死んじゃうわね、王妃様」


「えぇ! 大変じゃないですか! 浄化はできないんですか?!」


「してあげようと思ったけど、まさか隣国の王太子や国のお偉いさんがいる前で『それは呪物です』なんて言えないでしょ。だから見せてもらえないか頼んでみたけどダメだったわ」


「王子にそれとなく伝えることはできないんですか?」


「王子に? 近づくことさえできないのに、どうやって話すのよ」


「でも、婚約者ですし」


 モアとレヴレスは婚約者だが、彼はモアが自分のそばに近づくことさえ許さないため、会話らしい会話もしたことがなかった。


「失礼するぞ」


 そこへやってきた神官長から、モアは明日、チャベル主催の茶会に参加するようにと告げられた。


 どうしてもモアと話してみたいと言って聞かないコーネルにチャベルが折れた形で開かれる茶会だったが、モアはこれをチャンスだと思った。


「あのネックレスを奪うわ」


「はい? 奪う?」


「あのネックレス、どうにも嫌な気配しかしないし、あれだけ呪いが強ければいつもみたいにすぐ浄化なんてできっこない。でもあの状態の王妃様が素直にネックレスを渡すはずもない」


「だから奪うと?」


「人の命がかかってるんだから、そうするしかないでしょ」


「そんなことしてもすぐ捕まりますよ?」


「そこが問題よね……」


 なんの解決策も浮かばないまま、茶会の時間となった。


 茶会の場所は城の奥にあるチャベル自慢の庭園だったが、コーネルも参加しているとあり警備の数が多く、モアは「これは無理だ」と肩を落とした。


 茶会はチャベルが会話の中心となり進んでいて、コーネルがモアと話をしたそうにチラチラと様子を伺っているがその機会は訪れそうにない。


「ちょっと二人で話さない?」


 なのに突然コーネルがモアに声をかけてきた。


「え? 王太子が、二人?!」


 コーネルはきちんと席に座っているのに、隣にもう一人のコーネルがいることに、モアは驚いて目を丸くしている。


「あー、この国では魔法は珍しいんだったね。あれは僕がかけている幻影魔法だよ。そしてこれは認識阻害と遮音の魔道具」


 コーネルの指に鈍く光っているシルバーリンクは魔道具のようだ。


「魔法に魔道具?!」


「いいね、その反応。魔法が使えなくなったのは実はこの国の人間だけだってこと、君らは知らないんだよね?」


 コーネルの話では、この国以外では未だに普通に魔法は使われており、魔道具も正常に機能しているとのことだった。


「どうしてそんなことに……」


「だって、それは、この国にはとんでもなく巨大な呪物がそびえ立っているからじゃないのかな?」


「呪物だったら私にわからないはずがないんだけど」


「普通の呪物とは違うからね、あれは。禍々しい気配なんて微塵も感じさせず、だけど確実にこの国を衰退させてる。更に厄介なことに、この国に入った途端、他国の人間でも上手く魔法が使えなくなる」

 

 その巨大な呪物は、この国にいる人間から魔力を吸収しながらひっそりと時を待っているかのように沈黙を続けているのだという。


「それって……」


「あれだよ」


 コーネルが指をさした先には白く輝く城があった。


「お城が呪物?!」


「そうだよ。でも、君の近くにいるとあれの影響を受けずに魔法を使えるみたいだね。君はいるだけで周囲を勝手に浄化しているみたいだ。すごいね」

 

 コーネルが言うには、モアの周囲一メートルほどは呪物の影響が及ばないらしい。


「じゃあ、私が王妃様とずっと一緒にいれば呪物も浄化されるのかな?」


「あの王妃、やっぱり呪物を身につけてるの? 数年前から性格が変わって、彼女の周りの人間も少しずつおかしくなってるようだけど」


 以前は良妻賢母といった雰囲気だったチャベルが、今では派手好きで金遣いが荒く国政にまで口を出す悪妻になったのだとコーネルは言った。


「あれは本当にヤバいんです。あのまま身につけていたら王妃様はあと二ヶ月くらいで死ぬと思います」


「君はそんなことまでわかるの? 僕には本当のところ呪物の禍々しさなんてわからないんだ。あの城のことだって、そう言われているから知っていただけで、実際にこの国に来るまでは信じていなかったくらいだからね」


 この国に足を踏み入れた途端、魔力がごっそりと体内から抜け出ていく感覚が襲ってきたのだとコーネルは言った。


 ところが、そんな国で歴代一と言われるほど聖魔法を使えるモアに興味を持ち、実際に食事会で近くにいただけで魔力が抜けていかなくなったのだと続けた。


「僕は幻影魔法の使い手でね、本当はこの国を調べる目的できたんだよ」


「そんなこと、私に話してもいいんですか? 私はレヴレス様の婚約者ですよ?」


「だって君、彼とはなにも話すような仲じゃないでしょ? それに、君には僕の力が必要なんじゃない? 多分、今のこの国の政がおかしいことになってるのって、あの呪物のせいだろうし。君、あれを浄化したいんじゃないの?」


 コーネルの言葉にモアはなにも言えなくなっていた。


 そんなモアの様子を見て、コーネルは読めない笑みを浮かべた。


「図星だね、その顔は。いいよ、協力してあげる。だけど、僕の魔法は万能ではないから、上手くいくかは君の頑張り次第になるけどね」


 コーネルがモアに協力を申し出てきて、モアは少し戸惑ったもののその申し出を受け入れることにした。


 

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