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『亡国姫、最凶の邪神に【服従の輪】をハメて絶品キャンプ飯で餌付けする〜ヤクザ神をヒモに従え、グルメ国家を目指します〜』  作者: 月神世一


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EP 9

天然姫のサイコパスな野望と、パシリにされる神々

太郎国の深夜。煌びやかなネオンの下、タローソンの駐車場の車止めブロックに、この世界の頂点に立つ二柱と、一人の人間の少女がヤンキー座りで並んでいた。

デュアダロスは念念願の『葉巻』を吹かしながら、コンビニで買った黒い炭酸飲料を喉に流し込む。

「プハァ……。店員が紫色のグレープ風味のソーダを勧めてきやがったが、やっぱ極道はこっちの黒くてガツンとくるシュワシュワ(コーラ)に限るな」

「アタシはストロング系のチューハイ一択だけどね……ってか、アンタ葉巻の煙こっちに吐かないでよ!」

隣でヨレヨレのジャージ姿の創造神ルチアナが、ロールケーキをヤケ食いしながら文句を言う。

そんな宇宙規模の口論をBGMに、リアナは満面の笑みでタロウ・プリンを味わっていた。

「ん〜! この甘さと滑らかさ、最高です! 魔法ポーチのコンロがあれば、私でも再現できるかもしれません!」

「……でぇ、お嬢よ」

デュアダロスは葉巻を指に挟み、ふと真面目な顔(ヤクザの顔)になってリアナを見た。

「ダンジョンから無事に逃げ出して、美味い飯も食った。だが、てめぇの国(ポポロ国)は獣人のヤロウ共に滅ぼされたんだろ? てめぇはこれから、どうしたいんだ?」

邪神なりの、不器用な気遣いであった。

国を失った王女の悲痛な願い(復讐や国家再興)を聞き届けてやるくらい、美味い飯と葉巻の恩がある。

だが、リアナの口から飛び出したのは、神の理解をはるかに超えた回答だった。

「う〜ん。お父様も今頃、獣人たちに晒し首にされてるからぁ……私、お料理屋を開きたい!」

「…………は?」

ジャージ姿のルチアナが、持っていたストロング缶を取り落としそうになった。

「さ、晒し首!? アンタ、実の父親が晒し首にされてる(かも)って話を、なんでそんな『今日はお天気だからピクニックに行きたい!』みたいなトーンで言えんのよ!? そのトーンのまま『お料理屋を開きたい』って、どういう情緒してんの!?」

命を司る創造神すらドン引きする、究極のサイコパス発言。

ずっと離宮で料理ばかりしていた世間知らずのお姫様は、国が滅ぶことへの悲壮感よりも『自分の料理を自由に振る舞えるお店を出したい』という欲望の方が完全に勝っていたのだ。

「だって、お父様は『自由に生きろ』って言って隠し通路に逃してくれましたし……それに、獣人王国の人たち、とっても凶暴でしたから。普通に考えたら、王様は首を刎ねられてお城の門に飾られちゃいますよね?」

「いや、そうかもしれないけど! 普通の娘はそれを想像して泣くのよ!!」

ルチアナの真っ当すぎるツッコミを、リアナは「はて?」と首を傾げてスルーした。

一方のインテリヤクザは、少しの沈黙の後、深く頷いた。

「……フッ。過去スジに囚われず、自分のシマ(店)を持ちたいって心意気だな。よし、分かった。極道として、その夢に乗ってやる」

「本当ですか!? ありがとうございます、デュアダロスさん!」

デュアダロスは葉巻の灰を落とし、隣のジャージ女神を顎でしゃくった。

「おい、ルチアナ。てめぇも手伝え」

「なあああ!?」

ルチアナは信じられないモノを見る目で、デュアダロスとリアナを交互に指差した。

「わ、私は女神よ!? この世界を創り上げた最高神ルチアナ様よ!? 何故私が、人間の小娘の定食屋の立ち上げなんか手伝わなきゃいけないのよ! 冗談じゃないわ、アタシは帰ってコタツでソシャゲのイベントを……」

「お願いします、ルチアナさん。一緒に美味しいお店、作りましょうね?」

リアナは、プリンの空き容器を片付けながら、にっこりと聖母のような微笑みを浮かべた。

そして、ルチアナの頭の上の『服従の輪』に向けて、ほんの少しだけ念を送る。

ギリッ。

「イタタタタタタタタッ!!? わ、分かった! 分かったわよぉぉぉ!! 手伝えばいいんでしょ! 神をパシリに使うんじゃないわよこの悪魔ぁぁ!!」

頭を抱えてアスファルトを転げ回る創造神。

その横で、邪神デュアダロスは『あーあ、俺じゃなくてよかった……』という顔で、コーラを一口飲んで空を見上げた。

「ふふっ、ありがとうございます! 邪神さんと女神さんがスタッフなら、きっと世界一のお料理屋さんができますね!」

太郎国のネオンが瞬く深夜のコンビニ前。

かくして、サイコパス気味な天然料理姫を店長とし、世界を滅ぼすインテリヤクザと、コタツ依存症のジャージ女神をアルバイト店員に迎えた、狂気のお料理屋設立プロジェクトがぬるっと幕を開けたのであった。

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