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『亡国姫、最凶の邪神に【服従の輪】をハメて絶品キャンプ飯で餌付けする〜ヤクザ神をヒモに従え、グルメ国家を目指します〜』  作者: 月神世一


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EP 8

神と邪神の痴話喧嘩と、第二の被害者

「ピーッ、ピーッ、ピーッ」

深夜のタローソンの自動ドアが開き、二人の神が店外へ転がり出た。

太郎国のネオンが照らすアスファルトの上。かつて世界の覇権を懸けて争った『光の女神』と『闇の邪神』は、今や完全にヤンキーの口論――いや、未練がましい元カレと元カノの痴話喧嘩を始めていた。

「てめぇが俺をあんな薄暗い地下にほっぽり出したせいでなぁ! 俺は何年もコンビニ飯が食べられなかったんだぞ!? スジが通ってねえだろうが!!」

高級スーツを乱し、本気で涙目になりながら怒鳴るインテリヤクザ、デュアダロス。世界征服に失敗したことよりも、弁当の配給が止まったことへの怒りの方が遥かにデカい。

対するジャージ姿の創造神ルチアナは、ストロング缶をプシュッと開け、プイッとそっぽを向いた。

「ハァ? 知らないわよ! ダンジョンの管理と弁当の差し入れはフレア(不死鳥)の仕事だもの! アタシは今、ソシャゲのイベント周回で忙しいの!!」

「てめぇは、腹を空かせた兄を労る気持ちはねぇのか!? 俺の方が先に生まれたんだぞ!!」

「双子なんだから、兄も妹もありませぇーん! そもそもアンタがアタシの箱庭システムに文句つけるからでしょ! バーカバーカ!!」

メンソールタバコを吹かしながらアッカンベーをするルチアナ。

そのあまりに子供じみた挑発に、デュアダロスは額に青筋を浮かべた。

「あのクソアマ……! 創造神だからって調子に乗りやがって! 神速の居合でそのだらしないジャージごと次元の彼方へ……!!」

「やれるもんならやってみなさいよ! この前引いたSSRキャラの魔法で消し飛ばしてやるんだから!!」

神気と魔力が激突し、太郎国の空に雷鳴が轟く。

次元が歪み、世界が崩壊の危機に瀕した、まさにその時である。

『ウィーン……』

タローソンの自動ドアが開き、両手にプリンやロールケーキを抱えたリアナが出てきた。

逃げた店員の代わりに、レジに硬貨(お父様のヘソクリ)を置いて勝手に精算を済ませてきたらしい。

彼女は、バチバチと火花を散らす宇宙最高峰の二柱を見て、ぷくっと頬を膨らませた。

「も〜、うるちゃい! 近所迷惑でしょ!?」

「あン!? 嬢ちゃんはすっこんで……」

「アタシたちの喧嘩に人間が口出ししないで……」

二人が同時に振り返った瞬間。

「夜は静かにするって、ポポロ国のマナーですよ!!」

リアナは、デュアダロスに向けた時よりも遥かにスピーディーな手つきで、光り輝く『天の輪』をポイッと放り投げた。

カシャンッ!!

「――は?」

ジャージ姿の女神の頭(寝癖のついた金髪の上)に、無慈悲な【服従のスレイブ・ヘイロー】がガッチリと装着された。

「え、なにこれ……?」

「わ、私に刃向かったり、これ以上騒いだりすると、頭痛を起こしますからね!」

リアナがビシッと指を差した瞬間。

創造神に対する『お仕置き』のシステムが、強制的に起動した。

ギリギリィッ!!

「あ、いっ……!? 痛い痛い痛い痛いいいいいいっ!!?」

先ほどのデュアダロスと全く同じように、世界の絶対神たるルチアナが、アスファルトの上に膝から崩れ落ちた。ストロング缶がカランカランと転がっていく。

「なにこれ!? アタシ創造神なんですけどぉ!? なんでこんな人間のスキルが神の権能を貫通してんのよォォォ!! 頭カチ割れるぅぅ!!」

涙と鼻水を流し、ジャージを土にまみれさせてのたうち回る女神。

そのあまりに悲惨な光景に、一番顔を青ざめさせたのは、誰あろうデュアダロスだった。

(ヤバい……! あの痛みはマジでヤバい! これ以上嬢ちゃんを怒らせたら、俺までまたあの頭痛を食らう……!)

かつての宿敵が味わう地獄の苦しみを見て、インテリヤクザの心に強烈なPTSDが蘇った。

デュアダロスは血相を変えてリアナの足元にスライディング土下座を決めると、必死に懇願した。

「や、やめろぉぉ嬢ちゃん! 俺が悪かった! 仲良くする! ババアと仲良くするから!! だから俺の輪っかまで締めないでくれぇぇ!!」

「……もう、絶対に喧嘩しないってお約束できますか?」

「する! 誓う! 極道のスジに懸けて!!」

「わかりました。じゃあ、仲直りの印にこれ、一緒に食べてください」

リアナはニコッと笑うと、買ってきたばかりの『タロウ・プレミアムロールケーキ』を差し出した。

深夜のコンビニ前。

最強の邪神(高級スーツ)と創造神ジャージが、頭にお揃いの『服従の輪』を光らせながら、並んでヤンキー座りでロールケーキを頬張るという、前代未聞の奇妙な光景が出来上がったのである。

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