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『亡国姫、最凶の邪神に【服従の輪】をハメて絶品キャンプ飯で餌付けする〜ヤクザ神をヒモに従え、グルメ国家を目指します〜』  作者: 月神世一


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EP 3

無慈悲な料理人と、邪神の涙(ビール風味)

「ハァ……ハァ……勘弁してくれ……頭が、カチ割れる……」

冷たい石の床に大の字になり、インテリヤクザな邪神デュアダロスは虫の息になっていた。

リアナに対する殺意を完全に引っ込めると、ようやく【服従の輪】の締め付けが治まったのだ。高級スーツはすっかり土埃にまみれ、先ほどの威厳は見る影もない。

「わ、分かっていただけましたか? もう乱暴はしないでくださいね」

「ああ……スジは通すぜ、嬢ちゃん。俺の負けだ……」

デュアダロスが力なく片手を上げたその時である。

ギュルルルルルゥゥゥゥゥ……!

ダンジョンの最下層に、雷鳴のような音が響き渡った。

リアナがビクッと肩を揺らす。

「な、何の音ですか!? まだモンスターが……」

「……俺の、腹の虫だ」

デュアダロスは気まずそうに視線を逸らした。

「何百年も封印されてたんだ。その前は、不死鳥のヤロウが定期的にコンビニ弁当を差し入れしてくれてたんだが、あいつがバックレてからずっと絶食状態でな……。おい小娘、飯を作れ」

「えっ、ご飯ですか? はい! お任せください!」

料理と聞いて、リアナはパァッと顔を輝かせた。

背負っていた国宝『魔法ポーチ』を床に置き、ゴソゴソと中身を取り出し始める。

「じゃーん! 魔導コンロに、最高級のフライパンです!」

「なんでそんなモン持って逃げてきてんだテメェは……」

ツッコミを無視し、リアナは手際よくキャンプの準備を始めた。

ポーチから取り出したのは、大きく肉厚なキノコ『肉椎茸』と、みずみずしい緑色をしたキャベツである。

「今日はですね、お肉みたいにジューシーな肉椎茸と、新鮮なキャベツのサッと炒めを作りますね。味付けは、太郎国から輸入した『醤油草』の絞り汁です!」

「ほう……シャバの飯か。悪くねえ」

デュアダロスが寝転がったまま期待に胸を膨らませていると、まな板に乗せられたキャベツが、突如としてブルブルと震え出した。

『ま、待って! 切らないでぇぇ!!』

「うおっ!? キャベツが喋った!?」

驚愕する邪神をよそに、リアナは冷静に包丁を構える。

大気中のマナから噂話を吸収して育つ魔物野菜『ネタキャベツ』は、生き延びるために必死の命乞いを始めた。

『わ、私を切るなら極上のネタを教えるわ! 実はね、隣国の王様のフサフサな髪、あれトライバードの羽で作ったカツラなのよ!! それに、あの宰相は裏でゴルド商会とズブズブでね……!』

「へぇ、よく分かりません」

ザクッ!!

リアナの包丁が、一切の躊躇なく振り下ろされた。

『アッーーーーー!?』

真っ二つにされ、キャベツは断末魔と共に沈黙した。

「…………え?」

デュアダロスは、己の目を疑った。

「き、貴様……躊躇しないな……。あんなに必死に命乞いしてたのに……」

「え? でも、誰の噂話か全然分かりませんでしたし。それより、鮮度が落ちる前に炒めないと」

(この小娘、俺より冷酷じゃねえか……!)

邪神がドン引きしている間にも、リアナの手際の良い調理が進む。

フライパンの上で肉椎茸が焼けるジュージューという音。そこに醤油草の絞り汁が回しかけられると、香ばしい醤油と肉の脂の香りが、ダンジョンいっぱいに広がった。

「はい、お待たせしました! 肉椎茸とネタキャベツの炒め物です。あと、お飲み物はこちらをどうぞ!」

カチャッ、とリアナが差し出したのは、銀色の小さな円柱だった。

「こ、これは……『缶ビール』じゃねえか! 嬢ちゃん、なんでこんなモンまで持ってんだ!?」

「太郎国からの輸入品らしいんですが、お父様が夜な夜な飲んでいたのを、数本こっそりポーチに入れておいたんです」

デュアダロスは震える手でプルタブを引いた。

プシュッ! という小気味良い音。

何百年ぶりのアルコールを、喉を鳴らして一気に流し込む。

そして、熱々の肉椎茸とネタキャベツを口に放り込んだ。

肉椎茸から溢れ出す濃厚な肉汁。そして、命の危機に瀕して極限まで糖度と旨味を高めたネタキャベツのシャキシャキとした甘み。それを、香ばしい醤油の風味が完璧にまとめ上げている。

「…………美味い。なんだコレ……美味すぎる」

最凶のインテリヤクザの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

「娑婆の飯は……美味いなぁ……」

ぽろぽろと涙を流しながら、肉とキャベツを頬張り、ビールで流し込む。かつて世界を恐怖に陥れた男は、今や完全に『美味い飯に餌付けされた腹ペコのヒモ』と化していた。

「ふぅ……最高だったぜ」

すっかり平らげ、満足げに腹をさするデュアダロス。

「嬢ちゃん、最高にスジの通った飯だった。……ところで、食後に一服してえんだが、『葉巻』は持ってねえか?」

「持ってるわけないでしょ! 私はお姫様ですよ!」

リアナは呆れたように即答した。

「太郎国というところから入ってくる品物には色んなものがあったので、そこに行けば売ってるかもしれませんけど……」

「太郎国か……」

デュアダロスは、ギラリと目を光らせた。

「決まりだな。嬢ちゃん、俺たちはこれからその『太郎国』ってトコへ行くぞ」

「えっ!? ポポロ国を再興するんじゃ……」

「馬鹿野郎、極道にとって食後の葉巻は命より重てえんだ。それに、太郎国に行けばもっと美味い飯と酒があるんだろ?」

かくして。

故郷を追われた世間知らずの料理好き姫と、葉巻を求めるインテリヤクザな邪神の、太郎国を目指す奇妙なキャンプ旅が幕を開けたのである。

テンポ良く、ツッコミと「飯テロ」要素を盛り込みました! ネタキャベツの断末魔と、リアナの無慈悲さが良いスパイスになっているかと思います。

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