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『亡国姫、最凶の邪神に【服従の輪】をハメて絶品キャンプ飯で餌付けする〜ヤクザ神をヒモに従え、グルメ国家を目指します〜』  作者: 月神世一


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EP 5

ピラダイのつみれと、最強のお墨付き

「主よ! 妙なことになってな……この娘はただ者ではない!」

アスファルトに土下座したまま、ラーメン作務衣姿の竜王デュークが顔を上げた。

その視線の先には、パーカーのフードを被り、コンビニ袋をぶら下げただけの青年――佐藤太郎が立っていた。

「旦那様ぁ〜♡ お迎えに来てくださったのですね!」

「げっ、太郎じゃん。アタシまだサボってるのバレてないわよね……?」

不死鳥フレアが甘い声で太郎の腕に抱きつき、創造神ルチアナが屋台の陰に隠れてストロング缶を一気飲みする。

さらに、皿洗い場からは鼻にティッシュを詰めた狼王フェンリルが「あ、兄貴! お疲れっス!」と直立不動で敬礼した。

この世界の頂点に立つ者たちが、一人の青年の登場によってピリッと背筋を伸ばす。

しかし、当の太郎はいたってマイペースだった。

「よぉ。なんか賑やかだね。……それよりさ、いい匂いするなぁ。おでん、食べさせてよ」

太郎はフレアをあしらいながら、空いている丸椅子にどっかりと腰を下ろした。

その瞬間、屋台の空気が変わった。

(……試されているわ)

リアナの料理人としての勘が、ビビビッと警鐘を鳴らしたのだ。

この方は、ただの王様じゃない。舌の肥えた太郎国のトップであり、あのお父様が隠し持っていた『100円ショップのレシピ本』の著者ご本人だわ!

「かしこまりました! 少々お待ちください!」

リアナは気合を入れると、魔法ポーチの口を大きく開けた。

そして、中からビチビチと跳ねる凶暴な魚影を引きずり出した。

『ギャアアアッ!!』

現れたのは、鋭い牙をガチガチと鳴らす巨大な怪魚――魔物魚『ピラダイ』である。

本来なら槍で突くほどの危険生物だが、リアナは眉一つ動かさず、まな板の上でピラダイの脳天にすりこぎを一撃。

ドゴォッ!!

「失礼。少し暴れん坊なお魚ですので」

気絶(即死)したピラダイを、神速の包丁さばきで三枚におろし、すり鉢で丁寧に身をすり潰していく。

そこに生姜の搾り汁、刻んだネギ、そして隠し味の『味噌』を練り込み、熱々の出汁の中へ投入した。

「ほぅ……ピラダイをその場でつみれにするとはな」

隣で見ていたインテリヤクザ、デュアダロスが感心したように葉巻を揺らす。

数分後。

ふわりと浮かび上がったつみれから、極上の香りが立ち上った。

「お待たせいたしました! 『ピラダイのふわふわつみれ』と、関西風お出汁のおでんです!」

コトッ。

太郎の目の前に、湯気の立つ器が置かれた。

透き通った黄金色の出汁の中に、真っ白なつみれと、味の染みた大根、そしてこんにゃくが美しく鎮座している。

「いただきます」

太郎は箸を割り、まずはつみれを口に運んだ。

ハフッ、と熱さを逃がしながら噛み締める。

「…………」

沈黙。

神々が固唾を飲んで見守る中、太郎はゆっくりと咀嚼し、そして出汁を一口すすった。

「……うん。おいしいよ」

短く、しかし温かい言葉だった。

「ピラダイの弾力と旨味がすごいね。それにこの出汁……昆布とカツオの合わせ出汁に、薄口醤油で味を整えた『関西風』だ。僕の故郷の味だよ」

太郎は懐かしそうに目を細め、完食した器を置いた。

「はい! 子供の頃、お父様が隠し持っていた『タロウの料理本(100円)』を読んで、ずっと憧れていたんです!」

リアナが顔を赤らめて答えると、太郎は驚いたように目を見開き、そして優しく微笑んだ。

「そうなんだ。僕の本が、こんな遠くの国のお姫様にまで届いていたなんてね。……ありがとう、リアナ姫」

太郎は立ち上がり、ポケットから何かを取り出した。

それは、太郎国の紋章が刻まれた『通行手形』ならぬ、純金の『VIPカード』だった。

「これからもよろしくね、店長。この店は、僕のお気に入りだ」

チャリン。

カードがカウンターに置かれた瞬間、それは「最強の王による公認」を意味していた。

もはや、レオンハート獣人王国だろうが、魔王軍だろうが、この屋台に手出しすることは許されない。

「へへっ、良かったな、お嬢」

デュアダロスがニヤリと笑い、コーラで祝杯をあげる。

「フン、まぁまぁね。アタシのSK∞のおかげもあるんじゃない?」

ルチアナがそっぽを向きつつも、安堵の息を吐く。

「うむ! 俺も明日から厨房に入って、麺上げの修行をさせてもらおう!」

デュークが勝手に弟子入りを宣言し、フェンリルは「皿洗い終わりましたぁ!」と元気に叫んだ。

太郎国の路地裏に灯る、小さな赤提灯。

そこは、世界最強の神々と英雄たちが集い、世間知らずの天然姫が作る絶品料理に舌鼓を打つ、伝説の大衆酒場『ポポロ亭』となったのである。

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