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『亡国姫、最凶の邪神に【服従の輪】をハメて絶品キャンプ飯で餌付けする〜ヤクザ神をヒモに従え、グルメ国家を目指します〜』  作者: 月神世一


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EP 3

因縁の不死鳥と、横流しコスメの秘密

黄色い悪魔からしによる狼王ワンパン事件の翌日。

太郎国の路地裏にある屋台『ポポロ亭』は、早くも異様な熱気に包まれていた。

「へいらっしゃい! 姉御の作った熱々のおでん、食ってきな!!」

「そこのお客さん、空きグラス下げるッスね!」

屋台の前で威勢よく接客をしているのは、昨日までオラついていたフェンリルの舎弟(獣人のチンピラ)たちである。彼らはすっかりリアナを『最強の姉御』として神格化し、無給のアルバイトとしてポポロ亭の業務を完璧に回していた。

ちなみに彼らの元・ボスである狼王フェンリルは、鼻の穴にティッシュを詰めたまま、屋台の裏で泣きながら皿洗いをさせられている。

「ふふふっ、お店が賑やかになって嬉しいです!」

リアナはご機嫌で大根の面取りをしながら、ニコニコと笑っていた。

だが、平和な時間は長くは続かない。

カランコロン、と屋台には似つかわしくない、上品なヒールの音が路地裏に響いた。

「あら、こんな路地裏におでんの屋台なんてあったかしら?」

現れたのは、息を呑むほどの絶世の美女だった。

艶やかな髪に、完璧なプロポーション。太郎国でも流行の最先端を行くような高級なドレスを着こなし、その美貌は「永遠の17歳」と呼ぶにふさわしい輝きを放っている。

彼女こそ、世界の理を司る三柱の調停者の一人にして、現在は太郎の第三夫人(押し掛け女房)に収まっている不死鳥――フレアである。

「んんっ……良い匂いね。少しいただいていこうかしら」

フレアが優雅に屋台の暖簾をくぐろうとした、その時。

カウンターの奥でコーラを飲んでいたインテリヤクザ、デュアダロスがピタッと動きを止め、ギリィッ! と奥歯を強く噛み締めた。

「……てめぇ……」

「あら? どなた?」

「てめぇ!! フレア!! よくも俺のコンビニ弁当の差し入れをバックレやがったな!! おかげで俺は何年も絶食するハメになったんだぞ!!」

デュアダロスは血走った目で立ち上がり、バンッ! とカウンターを叩いた。

神話の時代からの因縁、世界征服の野望……そんなものはどうでもいい。ただひたすらに『俺のメシを放置して男に走った恨み』が、邪神の神気を爆発させていた。

「あらまぁ」

しかし、激怒する邪神を前にしても、フレアは全く悪びれる様子を見せなかった。

むしろ、頬に手を当てて幸せそうに身をよじらせる。

「だってぇ、あんな暗くてカビ臭い地下ダンジョンに毎日お弁当運ぶより、太郎様と一緒にあたたかいお部屋で『すき焼き』食べてる方が、ずーっと楽しいんですもの♡ 太郎様ったら、私の愚痴を朝まで聞いてくれて、冷えたビールまで注いでくれるのよ? あんな生活、もう二度と手放せないわ♡」

「てめぇぇぇっ!! 男の胃袋とビールに絆されやがって!! 神の誇りはねえのか!!」

「アンタこそ、なんでそんな高級スーツ着て屋台のおでん屋に入り浸ってんのよ。スジが通ってないのはお互い様でしょ?」

デュアダロスの怒髪天を突く怒りも、太郎にメロメロなフレアの前では暖簾に腕押し。

今度こそ太郎国の路地裏が消し飛ぶ神々の大喧嘩が始まるかと思われた、その時である。

「まぁまぁ、お二人とも。美味しいおでんの前で喧嘩はダメですよぉ」

リアナが、お玉を置いてスッと二人の間に入り込んだ。

そして、魔法ポーチの中から小綺麗なガラスの小瓶を二つ取り出し、フレアの前に差し出した。

「これ、ポポロ国特産の『天然化粧水』と『乳液』なんです。お肌がとってもモチモチになりますから、これを差し上げます。だから、デュアダロスさんと仲良くしましょ? ね♡」

にっこりと微笑む、無慈悲で天然な料理姫。

その小瓶を見た瞬間、フレアの瞳がキラリと輝いた。

「あら……! いい香りがするわね。保湿力も高そうだし……。ふふっ、物わかりが良い小娘ね♡ いいわ、今日はこのコスメに免じて、大目に見てあげる」

「えへへ、良かったです! すぐにおでん出しますね!」

機嫌を直して席に座るフレア。

平和が訪れ、デュアダロスも「チッ」と舌打ちしながら席に座り直した。見事な接客術である。

だが、その屋台の端っこで。

客引きをサボってストロング缶を飲んでいたジャージ姿の創造神ルチアナだけが、目玉を飛び出させて小瓶をガン見していた。

「ぶふっ!? ゲホッ、ゴホッ……!!」

激しく咽せるルチアナ。

「ちょ、ちょっとアンタ! それ!」

ルチアナはリアナに歩み寄り、小声で必死に突っ込んだ。

「それ! アタシが地球からこっそり横流しして、ゴルド商会に高値で卸した『SK∞(エスケーインフィニティ)』じゃないの!! なんでポポロ国の特産品になってんのよ!!」

「はい? エスケー……なんですか?」

リアナはきょとんと首を傾げた。

「お父様が『我が国の職人が作った最高の天然化粧水だ』って言って、小さい頃から私にくれていたものですけど?」

「(あのクソ親父、ゴルド商会から買った地球のバカ高い密輸コスメを、自国の特産品って偽って娘に与えてたのね……! パッケージのラベルまで綺麗に剥がしやがって!!)」

ルチアナは、人間の見栄と経済の闇の深さに戦慄した。

「ルチアナ様? どうかしたの?」

フレアが怪訝な顔で振り向く。このコスメが地球の横流し品であり、その利益がルチアナのソシャゲ課金代に消えていると知れれば、調停者としての立場が危うい。

「な、何でもないわよぉ!! あー、おでんのダシの良い匂い! アタシも大根食べよーっと!!」

ルチアナは誤魔化すようにストロング缶をあおり、そっぽを向いた。

かくして、パチンカスな神獣に続き、恋に浮かれた不死鳥までがポポロ亭の常連(コスメの虜)となった。

世界を創り、壊し、調停する最強の神々は、全員揃って太郎国のジャンクな文化とリアナのペースに、完全に呑み込まれてしまっていたのである。

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