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『亡国姫、最凶の邪神に【服従の輪】をハメて絶品キャンプ飯で餌付けする〜ヤクザ神をヒモに従え、グルメ国家を目指します〜』  作者: 月神世一


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EP 10

神と邪神の屋台酒、大衆酒場ポポロ亭の誕生

深夜のコンビニ前。

太郎国のネオンがチカチカと瞬く中、ジャージ姿の女神ルチアナは、袋から取り出したポテトチップスをパリパリと貪りながら呆れたように呟いた。

「言っとくけどねぇ!? 太郎国の国民は、あの転生者(太郎)が持ち込んだ日本の味と、天才エルフ料理長のせいで、とんでもなく舌が肥えてるからね。そんじょそこらの料理じゃ、客なんて一人も来ないんだからね!」

「……ってことらしいぜ。どうすんだ? お嬢」

インテリヤクザな邪神デュアダロスが、葉巻の煙を細く吐き出しながらリアナを見た。

いくら彼女が料理好きとはいえ、ここは異世界最大のグルメ大国だ。並大抵の覚悟では店など開けない。

しかし、当のリアナは全く動じていなかった。

「そうですねぇ……いきなり大きな店舗は無理ですから。まずは、手作りの『屋台』を用意して……」

リアナがチラリとルチアナの頭上の【服従の輪】を見ると、女神はビクッと肩を揺らした。

「わ、分かったわよ! 出せばいいんでしょ! 創造神の力をこんなことに……ええいっ!」

ルチアナが指をパチンと鳴らすと、コンビニの駐車場の隅に、赤提灯がぶら下がった立派な『木造の屋台』がポンッと具現化した。神の御業の、完全なる無駄遣いである。

「わぁ、ありがとうございます! さすがルチアナさん!」

リアナはパァッと顔を輝かせると、魔法ポーチから使い慣れた魔導コンロや巨大な鍋を取り出し、屋台の台にセッティングし始めた。

そして、あの真ん丸に太った魔物野菜『月見大根』や、肉厚の『肉椎茸』を次々と取り出していく。

「私、得意料理は『おでん』なんです。太郎国のお醤油草とお出汁を使って、じっくり煮込みますね!」

「……お、おう」

デュアダロスは、手際よく大根の面取りを始める王女の背中を見つめ、完全に気圧されていた。

グツグツと鍋が煮え始めると、夜風に乗って、出汁と醤油のなんとも言えない食欲をそそる香りが漂い始める。

「さて、役割分担です!」

リアナはお玉を片手に、振り返ってビシッと指示を出した。

「私はおでん担当の女将で、デュアダロスさんはカウンターに座る『愚痴聞きの相談屋おやじさん』。ヤクザ風の渋いアドバイス、お願いしますね! そしてルチアナさんは、表に立って『お客の呼び込み』が良いかと!」

「えぇ!?」

ルチアナは持っていたポテチをポロリと落とした。

「アタシが!? この全知全能の女神ルチアナ様が、ジャージ姿で『へいらっしゃい! おでん美味しいよ!』って道端で客引きすんの!? 絶対イヤよ!!」

ギャーギャーと騒ぎ立てる創造神。だが、リアナは全く意に介さず、ニコニコと微笑んだまま魔法ポーチから一升瓶を取り出した。

「まぁまぁ。とりあえず、開店祝いをしましょう」

トクトクトク……。

リアナが取り出したのは、強烈な度数を誇る庶民の酒『芋酒いもざけ』だった。

それを小さなグラスに注いで、デュアダロスの前に差し出す。

「おっとっと……」

邪神は思わず、場末のサラリーマンのような声を出してグラスを両手で受け取った。

続いて、ルチアナの前にもグラスが差し出される。

「ルチアナさんも、お疲れ様です。どうぞ」

「……あら、悪いわね」

女神も文句を言いながら、ごく自然な動作で芋酒を受け取ってしまった。酒の誘惑には勝てない限界オバサンである。

おでんの湯気が立ち上る、深夜の屋台。

リアナは自分用のグラス(中身はお茶)を高く掲げた。

「じゃあ、大衆酒場『ポポロ亭』の開店を祝って……カンパーイ!」

「「……カンパイ」」

チンッ、と安っぽいグラスが触れ合う音が、太郎国の片隅に響いた。

デュアダロスとルチアナは、度数25度の芋酒をクイッとあおる。五臓六腑に染み渡るアルコールの熱さと、目の前でニコニコとおでんを煮込む世間知らずのお姫様。

「……この子、マイペースすぎる……」

ルチアナは、すっかり毒気を抜かれた顔で、赤提灯を見上げながらため息を吐いた。

「……ルチアナ、諦めろ」

デュアダロスは葉巻を咥え直し、すっかり『屋台の常連のオヤジ』のような哀愁を漂わせて空のグラスを置いた。

「極道よりも、神よりも……ブレねえ『スジ』を持ってるヤツが一番最強なんだよ」

かくして。

マンルシア大陸最強の軍事国家の片隅に、世界最凶の邪神と創造神をパシリとして使役する、伝説の屋台『ポポロ亭』がひっそりと産声を上げたのである。

――第一章・完――

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