4.
両手に魔力のオーラで作った剣を精製して、自身に身体強化を付与して突撃しながら振り回す……ただ、闇雲に振り回すんじゃねえ。確実に首を切り落として振り回す! 突撃しながら両手の剣で切り落とすのはそんなに簡単じゃねえんだが、この俺にかかれば簡単な芸当ってわけだ。……突撃する速さが昔より遅いのもあるがな。
「な、何だあの動きは! 大人の騎士でもあんな動きができる者はそういねえぞ!」
「ボス! ここはあっしが! 食らえ、マジッククロー!」
ほう、魔力のオーラで作った鋭い爪か。中々の上出来じゃないか、人間の盗賊にしてはな!
だが!
「当たらなければ意味がない」
「っ!」
俺は当たる寸前でかわして見せる。鋭い爪が首を掠めるギリギリのところで避けてやることで、驚愕する敵のスキをついて……首を刎ねる!
「はぁっ! 悪い動きだぜ。魔法の爪が泣けるほどにな」
「ああ、シザシ!」
「そんな! あのシザシのマジッククローをギリギリで躱すなんて! あのシザシの動きを見切ったというのか!」
何寝ぼけたこと言ってんだか。さっきのでかい爪なんざ、俺が通う学園の上級生でもできるんだぜ? 勿論、俺もその気になればできる芸当だ。だが技量がなってねえ。魔法ってのは量に見合う技量が大事、そんなことは魔族のガキでも知ってるんだぜ? 少なくとも『前世の』俺は知っていたさ。
「くそ! 俺が矢で援護してやるからブラリ、ゴルヴァ、お前らで片付けろ!」
「分かりやした! 悪い夢を見せてやるぜ! エラードリーム!」
「ぬっ!?」
ちっ、あの錫杖からの光、幻惑魔法か。厄介だな。敵が増えて見えやがる。数百人にまで見えるが、ほとんどが偽もんだろう。この手で翻弄する奴は前世にもいたな。
「くらえ! プラスグラビティ!」
「ッ!」
今度は重力魔法か! 幻惑魔法を掛けた俺に重力を重くして見動きを封じるとは。盗賊ごときにそんな使い手がいんのか。……結構筋がいいのに盗賊になるとはもったいねえな。
「死ね! ファイヤーアロー!」
炎の矢! 流石に盗賊のボスってわけだ。三人とも中々の技だ。
ただの人間の盗賊ごときにしてはな。そんなものはこの体の俺でも、どうにでもできる。
「オラァッ!!」
「「「ッッ!!??」」」
この程度の魔法、この程度の魔力、この程度の技なんざ!
「この俺にかかればどうってことねえんだよおおおおおおおおおおお!!」
そう! 魔力圧を駆使すれば跳ね返せんだよ! こんな体から放出される魔力でも、使いようによってはな!
「ば、馬鹿な……俺達の魔法が、跳ね返された!?」
「最大限の重力魔法をかけたのに!」
「お、俺のファイヤーアローまで、消し飛んだ!?」
驚いてくれるな。面白いくらいの間抜け顔だなぁ。
「おいおい、その程度で驚いてくれるなよなぁ! これからもっと楽しくなるんだからよぉ!」
……と言っても、全盛期の十分の一も無いから最高とまではいけないけどもな。
「な、何なんだ……何もんだテメえ……!?」
「ん? 俺か? そうだな……」
俺、今の俺か、昔の俺なら、『前世の俺』ならこんな風に言うんだろうな……
――――俺の名は、最強の魔王#$%&だ!
……ってな。だが今の俺は人間に生まれ変わっちまっている。それならそれにふさわしい名乗りを上げるしかねえな。今の俺は弱いが、カッコよく名乗ってやるとすっか!
「俺はデザトス・レディプス。かつて魔王を滅ぼした七勇者の末裔の一人だ!」
間違ってはいない自己紹介だ。七勇者が魔王だった俺を滅ぼしたのは事実ではあるし、その末裔なのも事実だ。あれ? そこまでカッコつけなくね?
「な、何だと!? レディプスって確か、最弱の勇者の末裔のことじゃねえか!」
……それは何一つ間違っていないのがつらいな。この俺――前世の魔王だった俺は七人の勇者に負けた。そいつらに直接滅ぼされたわけではないが、その七人の中に確かにレディプスという名の剣士がいた。正確に言うと、剣士兼荷物持ち……荷物持ちで戦えていなかったっけ。
そんな荷物持ちの子孫に転生した自分がつらい!
「そ、そういうことだ! だが、勘違いすんなよ。俺は勇者の子孫だから今戦うんじゃない」
「何?」
「俺が、俺自身の意思が、戦いたくて仕方がないから戦うのさ! 俺が楽しみたくてなぁ!」
そうだ。今も昔――前世も、俺のやることは変わらねえ。これだけは変えられねえんだ!
「ちっ、戦闘狂かよ! 付き合いきれるか! 二人とももう一度魔法を掛けろ!」
「おっと、同じ手はつまらねえ! スラッシュショット!」
この程度の奴らの魔法なんざ二度も受けることもねえ。急所に斬撃を飛ばしてやったから少しの間は悶えることだろうぜ。
「ち、ちぃぃぃっ! なんて奴だ! こうなったら数で押すしかねえ! 野郎ども! やっちまえ!」
「「「「「おおおおお!!」」」」」
ふん。遂に数で押すっていう最終手段に出たか。カッコつけて腕の立つ幹部だけで勝負を決めようとするのは魔族も人間も同じ、そして不利になったら数に頼るのも同じか。
悪くはない手だ。卑怯とは言うまいよ。
「いいねえ、いい殺気だ。殺意と悪意が交じり合う匂い……悪くはない。だからこそ俺も応えようか」
だが、相手が悪かったな。本当に気の毒に思うぜ。
「全員刻んでやるよ。スラッシュストーム!」
「「「「「ッッ!!??」」」」」
盗賊どもに向かって言葉通り斬撃の嵐を放ってやった。まあ、魔力オーラの剣を高速で振るって、その斬撃をエネルギーの刃にして放ちまくるんだが、並の人間には防ぐことも避けることもできないだろう。
「「「「「ぎゃああああああああっ!!」」」」」
思った通りだ。盗賊ども全員が俺の斬撃の嵐に呑み込まれるように切り刻まれる。酷い奴は細切れだ。その中には、さっきまで威張っていたボス格の盗賊も……あらら、首チョンパだよ。
「あっという間に全員を殺しちまったな。ハハハハッハハハ!」
嗚呼……今、『人間の俺』の最初の戦いが終わり、さっきまで命だったモノがあちこちに転がっている……血とに濡れた勝利の匂い……!
「フフフフッ、ハッハッハッハッハッハッ……ハハハハハハハハハハハハ!!」
俺は、魔王から人間に転生した存在だった。この日、俺の『魔王だった前世』が弱い人間の心まで『前世の俺』好みに染めたんだ。
そして、今日から俺の新たな人生が始まった。




