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【短編】虐げられる少年は豹変しました 〜魔王の前世が全てを変える〜  作者: mimiaizu


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3/5

3.

 とある廃村で盗賊集団が酒を酌み交わしながら、今後の方針について楽しそうに会話していた。彼らはもともと隣国で暴れていたのだが、国の怒りを買ったせいで拠点をこの国に変えたのだ。このグレットアイ王国に。



 彼らは昼頃に、実習のために来ていた学生たちを襲撃した。貴族の子供達も通う学園だったらしく、身なりもいいので奴隷目的で襲撃したのだが、護衛の騎士や戦える学生も多くいたため手こずったのだ。挙句には、大半に逃げられてしまったわけだが、学生たちが逃げる際に荷物を捨てていってくれたので収穫が無かったわけではない。


 あまりにも下種な会話をする盗賊集団。そんな会話を耳にするのは同じ盗賊の仲間のみ。



 いや、今も鉄の籠に囚われる一人の少女がいた。馬車に積まれている鉄の籠の中に座り込む少女。彼女こそがさき程の話題の奴隷となる例の女だった。



 白色の長髪に緑眼、そして整った顔を併せ持つ十五歳ほどの少女。粗末な服を着せられているが元は貴族の出自だという奴隷だ。その眼に生気はなく、どこか投げやりで希望もない、感情すら失ったのかもしれないと思うほど絶望した顔だった。



 盗賊の下世話な言葉を耳にしても表情一つ崩さないのは心底『どうでもいい』とおもっているから。まともな人生すらも彼女は諦めていたのだ。そんな少女を盗賊達は嘲るように見たり言葉を掛けたりするが、それでも少女は何の反応も示さない。



 その時だった。



「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」




「「「「「ッッ!!??」」」」」



 突然、天にも響くのではないかと錯覚するほどの絶叫が、獣のような咆哮のごとき怒号が、馬車から響き渡ってきた。盗賊団の誰もが驚き、ある者は飲んでいた酒を吹き出し、ある者は笑いを止め、ある者は危険を感じた。



 もちろん、同じ馬車に乗っていた少女も驚いた。盗賊団ほど感情的な反応を示さなかったが、この場にいる誰よりもその叫びの発生源を知ることができた。



 それは……



「何だなんだ! さっき叫んでたのは! 今日とっ捕まえた学生かよ! 驚かせやがって!」


 

 その通り、盗賊団に今日捕まってしまった学生だったのだ。一人の盗賊が馬車を確認して分かったことだった。



「ちっ、ガキのくせにバカでかいこと叫びやがって。隣の娘みたいに静かにしてろよな」



 盗賊が一瞥する捕まった学生の名はデザトス・レディプス、濃い赤髪を短髪にした黒目の少年だった。この少年が実は勇者の子孫にあたることなど、彼らは知らない。



 そして、それ以上に、この少年に起こった異常事態など更に知るよしもない。



 目を見張る奴隷の少女を除いて。





 ……頭が痛いな。それもそのはずだ。人一人分の記憶、それも魔族の記憶を取り戻したんだ。一度にそんだけ膨大な情報が頭に入ってくれば頭もいたくなるわな。



 だが、それは今の俺にとっちゃあ幸運以外の何でもない。また……楽しめるからな。楽しい楽しい、血と血が、刃と刃が、魔法と魔法が、生と死が混じり合う喜劇をな!



「何だなんだ! さっき叫んでたのは! 今日とっ捕まえた学生かよ! 驚かせやがって!」


「ちっ、ガキのくせにバカでかいこと叫びやがって。隣の娘みたいに静かにしてろよな」



 ん? 嗚呼、そういや今俺って盗賊なんぞに捕まってんだっけ。まあ、弱い体だもんな。


 なら、肩慣らしにはちょうどいいか。前世の記憶が戻ってきた影響なのか知らんが、こんな体でも鉄の檻を砕けくらいには魔力が増えている。前の量でも無双できそうだったんだが都合がいいぜ。



「な、何!? こいつ、鉄製の籠を素手で壊しやがった!」



 ちっ、余計なことを………折角だから死んでもらうか。俺は激痛を無視してゆっくりと立ち上がり……魔法の手刀で側に来やがった盗賊の首を切り落とす。首を切り落とされた盗賊は何が起こったのか分からないといった顔で死んでいく。そして、血しぶきをあげてその場を赤く染め上げる。


 それにしても、この魔法も久しぶりだな。手に魔力のオーラで剣を精製する簡単な魔法だが、全盛期の俺なら大剣くらいまでに精製できたんだ。この体だと今はこれで我慢するか。



「おい、何してんだ………ってお前!?」


「なっ、あいつ首が切り落とされてやがる!」


「あのガキが出てきて………奴がやったのか!?」



 おお、仲間が死んだことに気づいて殺気だってきたな。手に手に武器を持って殺意を向けてきやがる。ゾクゾクするぜ。



「全員武器を持て! そのガキを殺せ! なんかヤバい!」



 へえ、盗賊のボスは今の俺の力量に気付いたか? まあ、皆殺しは確実だけどな。人間になったとはいえ、この俺を奴隷に使用なんざ五百年早い!



「一つ言っておく。お前らには恨みと感謝の気持ちが混ざっている。しかし、お前達が盗賊だという時点でどうしてやるかは決まっているんだ」


「ガキが、何をごちゃごちゃと言ってやが………がっ!?」


「な、何!?」



 魔力の手刀で紫色の斬撃を放ち、盗賊もう一人分首を落とす。……別にごちゃごちゃ言ってねえだろ。簡潔に言おうとしたのに遮ってんじゃねえ。これはもう説明はいらねえか。



「き、貴様!?」


「匂う、匂うぜ。人間……いや、人の血と血が舞い、剣と魔法が絡み合う……香ばしい匂いがな……」


「な、何だと?」



 本当に願ってもいない奇跡が起こるもんだな。よりにもよって『魔王だった』この俺が、人間に転生しようとはなぁ! 



「俺を害する者は全て等しく敵。つまり、お前らも敵! そんなお前らにも見せてやんよ。かつて人類の宿敵だったはるか先代の魔王様の剣と魔法をなぁ!!」



 新たな人生を謳歌してやろうじゃねえか! 人間――デザトス・レディプスの人生をよぉ! もう弱っちい『僕』はいらねえ。弱者のまま惨めに終わってなるものか! 



「ハハ、ハハハハハハッ!」





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