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文庫歌輪廻は探している

こんにちは。百合って美しいですよね。

大事にしましょう。

……ない。いくら探してもない。

私、塩谷あかねは、高校に入って初めての定期テストという重大局面を、ようやっと前日になって重い腰を上げ、対処する気に至ったのである。

至ったのであるが、明日の主な科目である英語。一時間目ということで、その前には確実にプリント課題を出さねばならないはずだ。しかし……

「……なぁい。いくら探してもない。」


授業中にもらったプリントであるのだから、授業を出席している限りはもちろん貰っているはずだ。にも関わらず見当たらないのだ。どこにも。

ファイルの中?机の上?鞄の底?勿論探した。そんな所にあったら苦労していないのである。灯台もと明るし、はっきり照らした末になければ、先人たちを恨みたくもなる。恨むべきは自分であると言うのに……机を叩きかけて、やめた。


午前二時。もう既に、諦めかけていた。夜食のメニューはどうしようか。というか、テスト範囲ってどこだっけ?二遊間、右中間……くだらないや。

そこで、私は"唯一の"友達である彼女に電話を入れることにした。繰り返すが、午前二時である。

「まだ起きてるよね?輪廻。あのさ、明日の英語、現国、数Aのテスト範──────」

「聞いた話では、全てRe○ditから出題されるらしい」

「そんな事ある!?」

「聞いた話だから」

「情報筋どうなってるの……」

「それで、あかね。中学校の頃は学年一位を取っていたわけだ。今回も狙っていると見た」

「……まさか。」


私には、勉強なんて向いていなかったのだ。期待されていたことはあった。しかし、どうにもダメだった。親からは偏差値に関わらず、ある程度の点数を切ってしまえば"罰則"が与えられた。

例えば、ゲーム機を取り上げられるとか、そういうのではなくて、もっと陰湿な────ともかく、思い返したくもない事実だけが私を構成していたりする。


そして、その構成要素を、彼女は知らない。私は語らなかったのだ。中二の春、両親は旅行先で、不慮の事故に遭ってしまった。

あれだけ高い壁のように見えた親が、交通事故なんかでくたばってしまうのが、私には、なにか悲しさよりも他の感情が来てしまった。

だから、私は私のことをあまり好きでない。


「ごめんね。黙り込んじゃって」

「いいんだ。それで、要件はそれだけなのか?」

「あー……えっと、英語の授業プリントって私がいつ貰ったとか、どこにあるとか……分かるわけないよね。ごめんね。でももう一縷の望みなの。」

「一縷の望み、か。なら手伝ってあげよう。なぁに、見返りにお金はいらないよ。」

「あげるつもりもなかったんだけど……」


「まぁ、まず鞄───」

「探した。探したよ私は。もちろん。」

「本当に?鞄には幾らか収納スペースがあると思うんだけど。果たして底だけ見て(やっぱないよな……)なんて悲観していたんじゃないか?」

「そんな馬鹿な……私がそんなところに───」


そうだ。私がそんな丁寧に仕分け……あれ?

「……あったんですけど!?」

「やっぱりそうじゃないか。この前の授業の帰り、急いで帰るとか言って、満杯のバッグに詰める方法を模索し、最終的に横ポケットで着地したはずだ」

「なんでそんなところを覚えてるの……1ヶ月も前の日付ってことは、多分それくらいだよね」

私は感嘆していた。提出物や今日の日にちは忘れるのに、こういうことだけ謎に覚えていたりする。きっと、もっとくだらないことだって覚えている。そう思うとうける。


はぁ、とため息をつく。そんな大事なことを忘れるなんて馬鹿だったのか、ということと、焦らず最初から頼っていれば、という呆れであった。そんな時に。


「それはまぁ」

「好きだからだよ」


───電話は切れた。

「好きだから」と聴こえた気がして、スマホの画面を急いで見る。トーク画面が開かれたまま。そりゃ、画面を見直したって、過去の電話内容まで見れる訳じゃない。


『好きだからだよ』という言葉を反芻する。

「ほんと、なんだったんだ……」

私の唯一の友達は、未知で満ちている。

明日学校で会ったら何から話せばいいだろう。もしや、ここまで食らっているのは私だけだったりして。

あの小柄で、少しの衝撃でも折れてしまいそうな輪廻が、今も寝室で枕に顔をうずめていたら。

「考えただけで、来るものがあるけど……」

……あるけど、そんなことはないか。


アラームは、3時間後にセットされた。

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