お姉さんと肝試し
ケンイチは小学一年生。
大人しくて、クラスに友達がいなかった。
ある夏の夜、地域の子供会でお寺とその周りの墓地を使った「肝試し大会」が開かれることになった。
心配した両親は、「これをきっかけに友達ができれば」と、ケンイチを参加させることにした。
だが、肝試しは二人一組で回る決まりだった。
友達のいないケンイチは、誰とも組むことができず、一人ぽつんと立っていた。
その時だった。
「君、一人ぼっち? 私もなんだ」
そう声をかけてくれたのは、ケンイチより少し年上の女の子。
多分、小学校高学年くらいのお姉さんだった。
「もしよかったら、私と一緒に行こうか?」
ケンイチは小さく頷き、彼女とペアを組むことになった。
ふたりは手をつないで、薄暗いお寺の参道を進んでいった。
木々の間を渡る風の音、遠くで鳴く虫の声。
突然現れる幽霊の格好をした大人たちに驚いて、ケンイチは何度も立ちすくんだ。
そのたびに、お姉さんは優しく笑って言った。
「大丈夫、怖くないよ。私がついてるから」
お姉さんの優しい笑顔が、ケンイチには眩しく見えた。
そうして少しずつ進み、奥のお堂でお守り札を置いて、肝試しのゴールへ向かう。
ゴール地点では、クラスメートたちが待っていた。
「お前、すげぇな! 一人で行けたのか?」
そう言われて、ケンイチは周りを見回した。
――けれど、隣にいたはずのお姉さんの姿は、どこにもなかった。
その夜をきっかけに、ケンイチは度胸のあるやつとして少しずつ友達ができていった。
けれど、あの時手をつないでくれたお姉さんには、二度と会うことはなかった。




