第2章:四次元的価値中立論
2-1. 価値評価はなぜ歪むのか?
価値とは常に局所的現象である。
短期・部分・主観の交点でのみ
「価値が生まれた/失われた」と判断されている。
例:
ある新技術が雇用を創出したと評価されているとき
同時に別の地域では雇用が失われている。
例:
ある企業の成功は株主を富ませるが
他社の倒産の加速度を上げることがある。
つまり今日の「価値評価」は
見える領域に限定された観測結果なのだ。
2-2. 時間を取り戻す:四次元的視座
では、観測領域を広げてみよう。
過去—現在—未来の全時空間を含める。
「今」だけでなく、「いつ」「どこ」での影響まで評価する
これが四次元的価値中立論の出発点だ。
◆ 図:価値評価の拡張
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| 視座 | 評価軸 | 価値の扱い |
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| 一次元 | 瞬間評価 | 価値創造と断定 |
| 二次元 | 空間評価 | 利害相殺が認識され始める |
| 三次元 | 社会全体 | 配置転換としての価値観 |
| 四次元 | 時空全域 | 価値の総和はゼロへ収束 |
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2-3. 総和ゼロの法則
ここで導かれる核心は一つ。
価値は時空間全体では中立である
(価値の総和はゼロに近づく)
誰かが得した分、誰かが損をする。
未来のために今日得した価値は
未来のどこかで損失となる。
幸福も不幸も、利益も損失も、
長期的には相殺関係にある。
これは、物理学における
「質量保存則」「エネルギー保存則」に近い発想である。
価値の世界にも同様の保存則が存在するのではないか。
2-4. 反論への先回り:なぜ絶望ではないのか?
読者はこう思うだろう。
「じゃあ社会は発展しないのか?」
これは誤解である。
経済成長は、
人間が観測できる範囲内での膨張を指す。
観測範囲外(地球環境や未来世代)の縮小は
評価から排除されているだけだ。
つまり、
・成長は局所的真実
・中立は全体的真実
であり、矛盾しない。
2-5. 中立論が示す倫理的転回
では、どう行動するべきか?
価値を創ろうとするのではなく、
価値を信じる主体を支援する。
自分の思想を押しつけるのではなく、
他者の信念に従う行動を尊重する。
これは、以下の倫理的転回を意味する。
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| 従来の倫理観 | 四次元的価値中立論が導く倫理 |
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| 自分が価値を創るべき | 他者の信念が最大化されるべき |
| 目的遂行は成果で判断 | 目的遂行は主体性で判断 |
| 利益追求は善 | 主体の成長が善 |
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ここに、新しい利他倫理の可能性が生まれる。
2-6. 組織への適用:企業とは何か?
この理論を企業に適用すれば
既存の前提は根底から覆される。
・企業は「価値創造主体」ではない
・企業は「価値追求主体を支援する道具」である
つまり企業の目的は、
従業員が信じる価値の実装を最大化すること
経営者や株主が目的を決めるのではない。
個々の信念が企業を動かすのである。
2-7. 結語:虚無を統制し、信念を解放せよ
四次元的価値中立論は、
価値創造の虚構を暴き、世界の真実を露出させる。
それは冷徹で、時に残酷である。
だがその冷たさが、
人間の主体性を守る最後の砦となる。
虚無は、信念の自由を保証する。
次章では、この倫理を
制度設計に落とし込む方法を示す。
企業はどのように再設計されるべきか。
主体性を最大化する組織とは何か。
その核心へ進もう。
【章末まとめ】
・価値は局所的にしか測れない
・時空間全体では価値の総和はゼロに収束
・価値創造ではなく価値信念の支援へ倫理転回
・企業は価値実装の道具である




